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宇宙ガンマ線背景放射は静穏な大質量ブラックホールが起源、東北大が新説を提唱

マイナビニュース / 2021年9月27日 20時29分

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画像提供:マイナビニュース

東北大学は9月22日、「宇宙ガンマ線背景放射」や「宇宙ニュートリノ背景放射」などの高エネルギー粒子の起源天体や生成機構について、“静穏な”大質量ブラックホールがそれらの起源であるという説を提唱したことを発表した。

同成果は、東北大 学際科学フロンティア研究所(東北大大学院 理学研究科兼務)の木村成生博士らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

宇宙には、ほぼ光速で飛び交う荷電粒子である宇宙線のほかにも、高エネルギーのさまざまな波長の電磁波や素粒子などが飛び交っており、高エネルギーのガンマ線は宇宙ガンマ線背景放射、ニュートリノは宇宙ニュートリノ背景放射と呼ばれているが、このような高エネルギーを持った電磁波や素粒子がどのように生成されるのか、またこれらの起源天体などはよくわかっていないという。

これまでの宇宙ガンマ線や天体ニュートリノの起源に関する研究では、周囲から多量のガスを降着円盤に重力で引き込み、活発に活動している大質量ブラックホールを要する銀河核「活動銀河核」やブラックホールから噴出される相対論的ジェットなど、ほかの波長の電磁波で明るく輝く天体が議論されてきた。

そうした中で、研究チームが今回着目したのは、ガスの落下量が比較的少ない静穏な大質量ブラックホールで、こうした天体は、活動銀河核としては暗めの「低光度活動銀河核」として観測されているという。

具体的には、これまでに得られているX線データから、低光度活動銀河核の大質量ブラックホール周囲のプラズマの状態を推定したところ、電子は100億度まで加熱され、ガンマ線を効率的に放射することが理論的に示されたとするほか、これまでに見積もられた低光度活動銀河核の数を考慮すると、それらが放射するガンマ線量は宇宙ガンマ線背景放射のデータを自然に説明できることもわかったという。

これまでの説では高エネルギーへと加速された「非熱的」な宇宙線電子や放射性核種の崩壊などが主に考えられていたが、今回の結果は、温度で特徴付けられる熱的なプラズマが宇宙ガンマ線背景放射の起源であることを提唱するものであり、「熱的」な宇宙から「非熱的」な宇宙へと切り替わるエネルギーがこれまでの予想と異なることを示唆しているという。

また、この大質量ブラックホール周囲の高温プラズマは、乱流状態にあると考えられ、そうしたプラズマ中の荷電粒子は、乱流場と相互作用して加速と減速を繰り返すと考えられ、それを計算したところ、少数の運のいい陽子は、1億GeV付近まで加速されることが示されたともしたほか、加速された宇宙線陽子はプラズマを構成する大多数の熱的な陽子、または熱的な電子が放出した光子と相互作用し、100万GeV程度の高エネルギーニュートリノを生成。計算の結果、100万GeV程度であれば宇宙ニュートリノ背景放射の実験データを自然に説明可能であることも示されたともした。

通常の活動銀河核にもコロナと呼ばれる高温プラズマ領域が存在しており、そこの熱的電子からの放射が宇宙X線背景放射の起源であることが知られているほか、明るい活動銀河核のコロナでも低光度活動銀河核と同様に宇宙線陽子が加速され、1万GeV程度のエネルギーを持つ宇宙ニュートリノ背景放射の起源であるとする説が提唱されており、これらの明るい活動銀河核に低光度活動銀河核の寄与を合算すると、宇宙X線背景放射、宇宙軟ガンマ線背景放射、宇宙ニュートリノ背景放射のすべてを大質量ブラックホール周囲の高温プラズマによって統一的に説明することが可能になるという。

そのため研究チームでは、今回のモデルで予言される近傍天体からのガンマ線信号とニュートリノ信号は、将来のニュートリノ実験計画やガンマ線衛星計画で検出が可能だとしており、今後、観測・実験技術の進歩により暗い天体の理解が進み、高エネルギー粒子起源の解明につながることが期待されるとしている。
(波留久泉)

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