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日大など、量子シミュレーションを実現するための極低温冷却手法を確立

マイナビニュース / 2024年5月22日 19時43分

画像提供:マイナビニュース

日本大学(日大)、東京理科大学(理科大)、科学技術振興機構(JST)の3者は5月21日、「量子シミュレーション」を実現するため、レーザー光で作られた2次元格子に閉じ込めた原子の気体を、量子力学の効果が顕著な極低温に冷やすための方法を大規模なコンピュータシミュレーションによって確立したことを共同で発表した。

同成果は、日大 文理学部 物理学科の山本大輔准教授、理科大 創域理工学部 先端物理学科の森田克洋助教の共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会(APS)が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

高温超伝導体や量子磁性体の理論解析のためには、ミクロな無数の電子の量子力学を解く必要があるが、既存のコンピュータではどれだけ高性能でも、その厳密な解を得ることは不可能。そうした中で研究したい物質と同じ数理モデルを持つ人工的なシステムを用いて、実験的にシミュレートする量子シミュレーションが注目されている。

その例の1つが、レーザー光と原子気体を用いた人工システムで、レーザー光を格子状に照射することで、物質内の結晶を模倣する。レーザー光であるため自然界の物質と比べて制御性に優れ、格子の間隔も物質の結晶よりも1000倍ほど大きいことから観測も比較的容易であり、物質内の電子集団の役割を果たすのは、レーザー格子中に充填された原子集団である。

しかし、こうしたシステムのボトルネックとなっているのが、「冷却」の問題。上述したように、原子同士の間隔が実際の物質よりも大きく開いているので、原子の動きを観測しやすいが、その一方で量子もつれの関係性が弱くなりやすいという欠点もある。そのため、より量子力学的効果が顕著になる絶対零度近くの極低温まで冷却する必要があるのだ。そこで研究チームは今回、原子気体の「エントロピー」の制御によって、この問題を打開する方法を検証することにしたという。

原子の集団の動きは高温になればなるほど乱雑になり、低温になればなるほどエネルギーの低い状態になるように落ち着いていく。この「乱雑さ」の指標となるのがエントロピー。ただし同じ温度でも、構成原子の性質によって、どれくらいのエントロピーを持つかが変わる。エントロピーが溜まりやすい性質を持つ気体では、低温であっても大きなエントロピーを持つ。また、孤立したシステムでは全体のエントロピーの総量は一定に保たれている。つまり、システムの一部にエントロピーが溜まりやすい性質を持つ部分(エントロピー溜まり)を恣意的に作れば、全体のエントロピーのうちの大部分をそこに溜めることが可能。その結果として、エントロピーの総量は同じでも、全体として温度は非常に低い状態を作成できる。今回の研究では、その性質を利用して、システムにエントロピー溜まりを作り、それ以外の残りの部分を量子シミュレータとして利用することが考察された。

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