東京医科歯科大など、分散型大規模量子コンピュータ実現のための技術を開発
マイナビニュース / 2024年5月27日 17時5分
MW光子からSA原子への転送実験では、任意の始状態にあるMW光子を基底状態にあるSA原子に入射させ、反射後のSA原子の量子状態が測定される。本来の交換ゲートではマイクロ波として単一光子が入射させられるが、今回の研究では微弱コヒーレント光パルスが入射させられ、反射後のSA原子状態の平均光子数依存性から単一光子入射に対する結果が推定された。
6種類の入射マイクロ波状態に対する、反射後のSA原子の「密度行列」(量子ビットのように2つの状態で表される物理系の量子状態を、2×2のエルミート行列で表現したもの)をプロットすると、MW光子の始状態とSA原子の終状態がよく一致しており、間違いなく量子ビットが転送されていることが確認された。なお、6種類の入力状態に対する忠実度の平均値は0.826だった。忠実度とは、2つの量子ビット状態の近さを表す尺度のことで、2つの量子ビットが完全に異なる場合に0、同じ場合に1となる。
次に、SA原子からMW光子への転送実験が行われた。まず予備的に、SA原子およびMW光子の始状態を仮定し、その反射後のマイクロ波パルスの振幅が測定された。次に、任意の始状態に準備したSA原子に対し、単色のMW光子が入射させられ、反射後のマイクロ波パルスの振幅が測定された。これら4種類の出力振幅の重なり積分を計算することで、反射後のMW光子の終状態が推定された。
6種類のSA原子の始状態に対する反射後のMW光子の密度行列がプロットされたところ、SA原子の始状態とMW光子の終状態がよく一致しており、こちらも待ちがなく量子ビットが転送されていることが確認された。6種類の入力状態に対する忠実度の平均値は0.801だった。
今回用いられたSA原子-共振器結合系は、超伝導量子プロセッサでは標準的に採用されている構成だ。そのため、今回実証されたSA原子とMW光子との相互作用方式は、最新プロセッサに直ちに適用できるという。また、SA原子に印加するドライブ波の周波数・強度を調整することで、ゲートの種類を自在に制御することが可能な点も今回の優れた点とする。たとえば、今回の相互作用方式を「量子ビット交換」から「量子もつれ生成」に容易に変更することも可能だという。これらの優れた点を活かした「分散型」超伝導量子コンピュータの実現に向け、さまざまな応用が期待されるとしている。
(波留久泉)
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