禁じられた主題、隠されたメッセージ-写真展「Human Baltic われら バルトに生きて」は今だからこそ見逃せない
マイナビニュース / 2024年5月28日 14時50分
東京・表参道のスパイラルガーデンで、国内初となるバルト三国ヒューマニスト写真展「Human Baltic われら バルトに生きて」がはじまりました。1960年代から90年代のバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)を代表する17人の写真家の作品200点以上が集結。旧ソ連社会における検閲や弾圧に対して、メタファーを駆使し隠れメッセージを潜ませて表現の不自由さに抗い、“真の意図”を伝えようとした写真家たち。同展はそんな彼らの作品を通して、ソ連時代を生きたバルト三国の人々のありのままの姿を力強く伝えています。
「『ヒューマニスト写真』は、人々の人生模様、そこにあるストーリーやドラマ性を扱うジャンルと認識されています。バルト三国の写真家たちは、あらゆる制約の中でそれに挑戦しました。禁じられた主題がたくさんあり、対象をドキュメントとして残すことも危険な行為でした。宗教はなかば禁じられたコンセプトであり、教会に行ったら仕事を奪われてしまうような状況で30年もの間、宗教的な主題を撮り続けた写真家の作品も今回展示しています」と、同展メインキュレーターのアグネ・ナルシンテさん。
発展する経済、豊かな暮らし――そんなソ連のプロパガンダにそぐわない、本来の生活や人々のリアルな姿を写真におさめることは許されず、宗教や貧困、性といった特定のテーマの撮影も禁止されていました。写真家に求められたのは、ソ連のイデオロギーに沿った“正しい記録”のみ。でもそれはファンタジーであって、実際は店には何も買うものがなく、人々の生活は食卓に並べるものにも事欠く貧しいもの。
また写真は芸術とみなされておらず、他の芸術家たちのような社会的地位を得ることができない写真家たちは、生活のために働かねばならず、材料不足にも悩まされていました。権力者によって展示会が中止になることも多く、写真展の開催はアンダーグラウンドで、会場のドアを閉めてひっそりと数日間だけ。それでも、公けな宣伝はせずともその存在はみなが知っていたそう。
さまざまな制約や抑圧の中でも、人々のありのままの姿を焦点にあてたいと考えた写真家たちは、視覚的な比喩や隠されたメッセージ、そして特殊なコミュケーション言語を用いることで、厳しい検閲をかいくぐって制約に立ち向かいました。たとえば、教会の祭りに焦点を当てた写真家の場合、“祝福する人々”を撮影しても宗教的なオブジェは撮らないという選択をし、宗教的な儀式をしたり一緒にピクニックを楽しむ人々の姿は、「祝福する村の人々」というタイトルで主題を隠したそう。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
女性が自ら服を脱ぎ始め、隠し撮りを…ハニートラップから核兵器まで、北朝鮮がロシアから“学んだこと”
文春オンライン / 2024年6月24日 6時0分
-
父の狂死、妹との近親相姦的関係…クリムトと同時代を生きた画家、エゴン・シーレの過激な半生
CREA WEB / 2024年6月19日 7時0分
-
東京ミッドタウン「First Born」展|無邪気な家族の姿を捉えた有田泰而さんの代表作を展示
IGNITE / 2024年6月7日 20時0分
-
名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑 第10回 それが理由!? 西洋画にヌードが多い本当のワケ
マイナビニュース / 2024年6月5日 7時5分
-
名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑 第6回 ゴッホも真似た! 西洋で“ジャポニスム”が盛り上がった本当の理由
マイナビニュース / 2024年6月1日 7時5分
ランキング
-
1チョコやサプリで話題の「GABA」。ストレス軽減効果は本当にあるのか
オールアバウト / 2024年6月25日 20時45分
-
2「3大疾病」と「7大疾病」の対象になるのはどんな病気?50代が検討するときのポイント
オールアバウト / 2024年6月25日 19時30分
-
3【お風呂掃除】カビが生えにくくなる入浴後の習慣とは? - リンナイが解説
マイナビニュース / 2024年6月24日 12時27分
-
4安易な投稿を後悔しています… SNSで交際発表したカップルの「悲惨な末路」4つ
ananweb / 2024年6月25日 20時45分
-
5牛肉、うなぎ、あさり、鶏肉など…繰り返される「産地偽装」「産地ロンダリング」のカラクリ
NEWSポストセブン / 2024年6月25日 16時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください