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東京海洋大、生涯に1回しかできないサケの卵を何度も生産できる技術を開発

マイナビニュース / 2024年5月28日 16時53分

画像提供:マイナビニュース

東京海洋大学は5月25日、マスノスケ(キングサーモン)やベニザケのように、一度成熟して産卵すると力尽きて斃死(へいし)してしまうサケ類の卵や精子の幹細胞を、複数年にわたって産卵可能なニジマスに移植して代理親とすることで、1回の成熟で斃死してしまうサケ類の卵や精子を複数回生産できる技術を開発することに成功したと発表した。

同成果は、東京海洋大 学術研究院 海洋生物資源学部門の吉崎悟朗教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国科学振興協会が刊行する「Science」系のオープンアクセスジャーナル「Science Advances」に掲載された。

マスノスケやベニザケなど、太平洋のサケ類の多くは海での回遊生活の後、自分が生まれた川に戻り、産卵を終えると、雌雄どちらも生命を使い果たして力尽き死んでしまう一方で、太平洋に分布する原始的なサケと考えられているニジマスやカットスロートは産卵後も生き残り、その後も毎年産卵を繰り返すことが知られている。そこで研究チームは今回、「一回産卵型」の代表としてマスノスケとヒメマス(ベニザケの淡水型)を、「多回産卵型」の代表としてニジマスを用い、これらの種の卵巣や精巣内に存在する生殖幹細胞の挙動を解析することにしたという。

解析の結果、多回産卵型のニジマスでは、産卵期後も生殖幹細胞が卵巣、精巣内に残存するのに対し、一回産卵型種の生殖幹細胞は成熟卵巣や成熟精巣からは完全に消失する(一回産卵型種の卵巣や精巣では、一度しか卵生産や精子生産を行えない)ことが突き止められた。

次に、この生殖幹細胞の挙動は幹細胞自身が制御しているのか、あるいはそれを取り囲む細胞環境が制御しているのかを解明するため、自身の生殖細胞を除去したニジマス宿主へ、マスノスケの生殖幹細胞の移植が実施された。ニジマス宿主は通常では卵や精子を生産することはないが、生殖幹細胞移植が施されたニジマス宿主は成熟年齢に達するとマスノスケの卵、精子を生産することが確認されたという。

さらに、ニジマス宿主は成熟後も斃死することなく、翌年以降も繰り返し成熟し、雌宿主は3年間、雄宿主は4年間にわたり、それぞれマスノスケの卵、精子を繰り返し生産することが確かめられた。なお、これらの卵や精子は正常な受精能を有しており、両者を受精させることで健常なマスノスケの次世代を生産することができたとする。また、マスノスケの幹細胞を移植したニジマス宿主の卵巣や精巣の構造を産卵期後に観察した結果、大量のマスノスケの生殖幹細胞を保持し続けていることも明らかにされた。つまり、生殖幹細胞が初回の産卵期後に消失するか維持され続けるかという細胞運命の決定は、生殖幹細胞を取り囲む細胞環境が制御していることが突き止められたのである。

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