阪大と名大、鉄とアルミの合金「アルパーム」の90年に及ぶ謎を解明
マイナビニュース / 2024年5月29日 18時51分
大阪大学(阪大)と名古屋大学(名大)は5月28日、軟磁性材料として知られる合金「アルパーム」(Fe3Al)中の、鉄とアルミニウムの各原子の規則配列の速度および移動のし易さの関係における、約90年にわたる謎を解決したことを共同で発表した。
同成果は、阪大大学院 工学研究科の柳玉恒特任助教(常勤)、同・奥川将行助教、同・小泉雄一郎教授、名大大学院 工学研究科の足立吉隆教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、ナノ構造を含む無機材料の全般を扱う学術誌「Acta Materialia」に掲載された。
アルパームは、鉄とアルミニウムが3対1を基本とする割合で規則的かつ三次元的に配列した「D03型構造」を有した物質。熱処理や組成(配合割合)によって特性が大きく変化し、従来はチタン・ニッケル合金のような単価の高い合金でしか実現されていない超弾性や形状記憶効果なども発見されており、それは鉄とアルミニウムの原子の規則配列が関係していると考えられている。ただし、その特性を決定する原子の規則配列を制御する熱処理条件の最適化については、これまでは実験的な試行錯誤を経て見つけ出すしかなかったという。
原子の規則配列は、原子の移動の繰り返しによって生じるため、2種類以上の元素が混じり合う速度や放射性同位体元素の移動速度から評価される「拡散データ」を用いれば、原子の規則配列の速度も予測できると考えられてきたが、実証されていなかった。
その理由は、規則配列の発達する過程を、結晶全体の平均的な原子配列の規則性の変化と、規則配列の位相のずれた領域同士の界面の移動と原子の移動との関係が、明確ではなかったことにあるという。さらには、界面の三次元形状およびその変化を実験観察することができないことも長年の問題だったとする。
研究チームの小泉教授は阪大の助手だった20年以上前に、原子の移動速度と規則配列の形成速度を関連付ける研究に着手したが、非常に難題だったという。その理由は主に以下の2点の過程によるという。
原子の規則配列が形成される過程が、直接隣り合う原子同士の種類が規則的になる過程
規則配列ができた領域同士が出会った際に規則配列にずれがある場合に形成される界面の移動と消滅する過程
特に、(2)の界面移動速度を決める因子が明確では無かったことが困難を極めた要因だったとする。そこで今回の研究では、20年前に蓄積された逆位相境界の三次元成長のデータを、専門知識を持った研究者を研究チームに迎え、20年間の研究と技術の進展を駆使して改めて解析し直すことにしたという。
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