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「原始ブラックホール」は生成されない? Kavli IPMUが矛盾点を発見

マイナビニュース / 2024年6月3日 13時3分

そこで、現在最も盛んに研究されているモデルが、横山教授を提案者の1人とする、超急減速が特徴の「ウルトラスローロールモデル」という一連のモデル。これは球の転がる坂道の一部に平坦な場所を用意し、インフラトンがそこに差し掛かると急減速して、「ハッブル時間」(その時の宇宙年齢の目安となる指標)あたりの変化が一時的に小さくなり、その時にできたゆらぎは相対的に大きな値を持つことから、特定のスケールに大きなゆらぎを生成するという内容だ。その結果、対応した質量のPBHを生成することができるとする。

なお、従来はこのような小スケールで起こる現象は、CMBで観測できる大スケールの現象には一切影響しないと考えられてきた。それに対して研究チームは今回、そうしたPBH形成を実現するようなインフレーションモデルにおいて、PBHに関係した大きな振幅を持った小スケールのゆらぎ同士が量子論的にぶつかり合う効果を、場の量子論に基づいてはじめて詳細に計算することにしたという。

計算の結果、従来の常識を覆し、そのような小スケールに生成された大きなゆらぎが、CMBで観測されるような大スケールのゆらぎにも影響を及ぼすことが判明した。特に、重力波観測で示唆されている太陽の数十倍もの質量を持つブラックホールの起源や、ダークマターの起源をPBHによって説明できるほどの大きなゆらぎを予言するモデルは、大スケールにおいてCMBで観測されている以上の温度ゆらぎをもたらしてしまうことになり、観測結果と矛盾してしまうことが突き止められたとした。

今回の計算は特定のモデルに基づいたものだが、インフラトンがすべての波長のゆらぎの起源になっているモデルにおいて、PBH形成を実現するような既知のモデルのほとんどに当てはめることのできる結論である。そのため、単一場インフレーションモデルにおいて、観測的に意義のあるようなPBHを生成するのは極めて困難であることがわかったといえるという。つまり、PBHを生成するためにはより複雑なモデルを考えるか、まったく別のメカニズムを考えていく必要があるとしている。
(波留久泉)



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