植物の病原菌への抵抗力を向上させる2種類の物質をジャガイモ疫病菌から発見
マイナビニュース / 2024年6月4日 13時7分
続いて精製されたPi-CerDを用いてジャガイモ葉を処理したところ、活性酸素の生成が誘導され、疫病菌への抵抗性が向上したことが判明。同様に、Pi-DAGAの部分構造である不飽和脂肪酸の1種「エイコサペンタエン酸」(EPA)を用いて、ジャガイモの塊茎が処理された。すると、ジャガイモが抗菌物質である「リシチン」を生産し、疫病菌の感染が阻害されたという。また、Pi-CerDやEPAによる抵抗性応答の活性化は、ジャガイモ以外の植物でも確認されたとした。
研究チームは次に、Pi-CerDとEPAに含まれる、植物に認識される構造を調査。その結果、それぞれ「9-methyl-4,8-sphingadienine」および「5,8,11,14-tetraene-type fatty acid」であることが解明された。両構造は、真菌や卵菌では共通して見出される一方で、高等植物は持たない分子構造であり、植物はこれら非自己の分子を「微生物関連分子パターン」として認識し、免疫応答を発動する指標としていることが示されたとしている。
最後に、Pi-CerDとEPAを処理した植物の遺伝子発現が網羅的に解析され、比較が行われた。その結果、異なるセットの遺伝子群が活性化されていることがわかったとのこと。これらの結果から、Pi-CerDとEPAは植物の異なる受容体を介して認識されていることが示唆されたという。
作物の農業生産の現場において、病原菌の感染による減収は最も重大な問題の1つだ。今回の研究では、病原菌の細胞に含まれる「植物に認識される構造」を解明し、それらの物質を植物に与えることで、免疫反応が活性化されて病害が軽減されることが示された。今回の研究で見出された物質は、魚介類やきのこなどに多く含まれている成分であり、植物の病気を予防する「バイオスティミュラント資材」(生物刺激資材)としての活用が可能だ。研究チームは、植物が本来持っている免疫力を活性化する同資材について、環境負荷を低減した農業への活用が期待されるとしている。
(波留久泉)
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