1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

天の川を高速で通過した暗黒物質サブハローの痕跡、慶大などが発見

マイナビニュース / 2024年6月4日 18時36分

観測では、一般的な星間分子ガスの調査に用いられるCOのJ=1-0回転スペクトル線と、強い星間衝撃波の影響を受けた領域で生成される一酸化ケイ素(SiO)のJ=2-1回転スペクトル線の計測を実施。その結果、特異分子雲が約15光年×3光年の空間サイズであること、太陽光度の約780倍もの力学的パワーを有すること、視線速度が異なる2つ(40km s-1と65km s-1)の拡散雲を橋渡ししていること、そして過去に強い星間衝撃波を受けた痕跡が色濃く残されていることが判明したという。

さらに、特異分子雲の周辺環境を調べるため、再度FUGINサーベイデータの精査が行われたところ、同分子雲が直径約50光年のシェルの一部であること、その端では同分子雲に酷似した成分が複数見られることが判明したという。

また、広域環境を調べるため、水素原子21cmスペクトル線全天サーベイ「HI4πサーベイ」のデータも精査され、そこから天の川の当該位置に直径約230光年の巨大な原子ガスの空洞が発見されたとするほか、その下方には長さ約900光年×幅約230光年の長大なフィラメントがあることも確認されたという。

これらの空洞/シェル/フィラメントは、天の川を上下に貫くように一直線に配列しており、ハロー部から降ってきた何らかの天体が円盤部を高速で通過した可能性を強く示しているという。そして、フィラメントの先端に明るい天体が存在しないことから、降ってきた天体は矮小銀河や球状星団になり損ねた「ダークマターサブハロー」である可能性が高いと考えられると研究チームでは指摘している。

観測された2つの速度成分の速度差と、フィラメントの天の川に対する傾き角から、ダークマターサブハローの突入速度は約130km s-1と見積もられ、この突入速度と空洞の直径から、ダークマターサブハローの質量は約6000万太陽質量と予想されたとする。これは、理論的に想定されているダークマターサブハローの質量範囲(100万~10億太陽質量)の中では比較的小さな部類に属し、かつこれまでの観測から存在が示唆されたダークマターサブハロー中では最も低質量なものに相当するという。

今回の研究により、矮小銀河よりも小さな質量を持つダークマターサブハローの存在が示唆されたが、これまでそのような天体の存在は予測されていたものの、実際の観測で確認されたのは今回が初めてのことであると研究チームでは説明しているほか、矮小銀河や球状星団などの「見える」天体を伴わないダークマターサブハローの確認も初だとしている。

また、今回の発見の端緒となったのは、円盤部における広速度幅の分子ガス構造の無バイアス探査だったことから、今後、同様の探査を継続・拡大して円盤部の中性ガスの精密な分布・運動を把握することによって、さらなるダークマターサブハローの間接検出が見込まれるともしており、天の川銀河の理解を深めるとともに、ミッシング・サテライト問題の解決に貢献することが考えられるもとしている。
(波留久泉)



この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください