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早大、物質中の創発磁気モノポールに起こる集団振動現象を理論的に発見

マイナビニュース / 2024年6月4日 19時44分

画像提供:マイナビニュース

早稲田大学(早大)は6月3日、「磁気ヘッジホッグ格子」(HH格子)に光を照射した時に期待される集団運動の性質を数値シミュレーションで調べた結果、磁気モーメントの特殊な空間配列パターンとして磁性体中に現れる創発的な「磁気モノポール格子」に光を照射すると、「磁気モノポール」(MP)と「アンチ磁気モノポール」(AMP)が一斉に位相を揃えて振動する集団振動現象が起こることを理論的に発見したと発表した。

同成果は、早大大学院 先進理工学研究科の衛藤倫太郎大学院生(日本学術振興会特別研究員DC1)、同・大学 理工学術院の望月維人教授の研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。

磁石では必ずN極とS極はペアとなっているが、ディラックによって提唱されたのが、特定の条件下ではN極またはS極だけの素粒子、つまりMPとAMPが存在しうるというもので、現時点では未発見となっている。

しかし近年になって、ある種の磁性体では、特殊な三次元磁気構造のHHとAHHが発見されており、両構造は物質中を動き回る伝導電子が磁場として感じる仮想的な場「創発磁場」の湧き出し(N極)と吸い込み(S極)として振る舞うため、仮想的なMPとAMPと見なすことができるという。ちなみに、HHやAHHはしばしば周期的に並んでHH格子という構造を作ることが知られており、実際にマンガン化合物の「MnGe」や「MnSi1-xGex」、鉄酸化物の「SrFeO3」などで発見されている。

エレクトロニクスへのさまざまな応用が期待されることから、HH格子が光やMWに応答してどのような振動現象や振動パターンを示すのかは、基礎科学と技術応用の両方の点から重要。しかし、過去にその問題に取り組んだ研究は実験的にも理論的にもほとんどなく、未解明のままだったという。そこで研究チームは今回、HH格子に光を照射した時に期待される集団運動の性質を、微視的な理論モデルを用いた数値シミュレーションにより調べることにしたという。

HH格子でHHとAHHは、渦糸状の磁化配列「ディラック(D)弦」でつながっている。HHの真下にある正方格子上の4つの磁気モーメントは、らせんを描くように下に降りていき、AHHへとつながっていく。このような磁化配列の渦糸構造と表現するが、らせんには右巻と左巻があるため、D弦にも右巻と左巻の2種類があることになる。1つの物質中に必ずしも2種類のD弦が現れるとは限らないが、今回の研究で扱われたMnSi1-xGexやSrFeO3などで実現しているHH格子では、磁気渦糸の巻き方が異なる2種類のD弦(AとB)が存在するため、多彩な電磁応答が期待できるとする。

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