東工大など、低次元超伝導体「グラフェン-カルシウム化合物」の新事実を発見
マイナビニュース / 2024年6月6日 14時6分
次に、電子回折法により原子構造が調べられたところ、界面のカルシウムはSiC表面の原子と整合した配列が示されており、いわゆる「エピタキシャル成長」を起こして金属層を形成していることが判明。そして、この金属層の形成前後の超伝導特性を比較した結果、形成によって超伝導転移温度が上昇していることがわかったとのことだ。
また、角度分解光電子分光法と第一原理計算を用いて、転移温度上昇の背景にある物理的機構も調査。すると転移温度上昇には、金属層によって生じる現象の「ファン・ホーベ特異性」(物質中で、多数の電子が特定のエネルギー状態に集中する特殊な現象)が寄与していることが確かめられたとしている。
研究チームによると、今回の結果は2次元超伝導体の開発に重要な知見をもたらすとのこと。3次元の超伝導体を薄くして2次元化すると、多くの場合転移温度が低下してしまうのに対し、今回の研究のように支持基板との界面構造まで制御すれば、転移温度の低下を防ぐことができ、ひいては将来的に転移温度向上へとつなげることが期待されるとする。
グラフェン-カルシウム化合物は、ありふれた元素から構成される低次元物質であるため、低コストで微細な超伝導素子を生成でき、量子コンピュータの集積化と普及に貢献できるという。量子コンピュータにより複雑系の大規模・高速な計算が可能になると、カーボンニュートラルへ向けたエネルギー循環の最適化が実現するほか、原子・分子反応の直接シミュレーションにより触媒開発・創薬の効率が劇的に向上することなども期待される。
研究チームは今後、さらに微細な超伝導体を実現するため、カーボンナノチューブやフラーレンのような1次元・0次元のクラスター状物質の超伝導化に取り組んでいくとする。また炭素だけでなく、水素やホウ素(ボロン)などの他の軽元素も用いることで転移温度を大きく上昇させ、温度変化に耐性のある量子コンピュータの実現へとつなげていくとしている。
(波留久泉)
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