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OIST、脳が酸素不足となった際に記憶障害が生じるメカニズムの一端を解明

マイナビニュース / 2024年6月10日 19時35分

脳卒中では、脳が酸素不足になると、健忘(最近の記憶がなくなること)が症状の1つとなる。酸素欠乏が脳に及ぼす影響を調べることは、薬の開発が期待できることからも重要。そこで今回の研究では、マウスの脳組織を、生きた脳の自然環境を模倣した生理食塩水に入れる実験が行われた。

通常、溶液中には脳組織の高い酸素需要を満たすために酸素が添加されるが、それを窒素に置き換えることで、一定時間、細胞から酸素を奪うことができる。その後、個々の細胞の電気的活動を記録するために電極が取り付けられ、生きたマウスの神経活動を誘発するのと同様な方法で細胞が刺激された。その結果、aLTPの維持には、神経細胞と脳の血管の両方におけるNOの産生が必要であることを発見したという。

また神経細胞と血管に加えて、aLTPには、グリア細胞の一種である「アストロサイト」の活動も必要であることが示されたとする。脳の細胞では、ニューロンが主役で多数派のイメージがあるが、実はその10倍以上存在するのがグリア細胞で、ニューロンの生存や発達のために脳内環境の維持と代謝などの支援を行っている存在。アストロサイトは、神経細胞と血管壁細胞の両方に枝を伸ばしており、両者のコミュニケーションをサポートしていることが知られている。

なおNO合成は、グルタミン酸が受容体を活性化することで行われ、そのための分子メカニズムやNOによるグルタミン酸放出の分子メカニズムをブロックすると、最終的にグルタミン酸-NO-グルタミン酸ループが破綻して、aLTPが停止することがわかっている。

注目すべきは、aLTPを支える細胞の過程は、記憶の強化や学習を支えるLTPの過程と、部分的に重複しているという点だという。aLTPが存在すると、LTPに必要な分子活動が乗っ取られ、aLTPを除去すると、学習と記憶に関連するLTPが助けられる。このことは、長時間持続するaLTPが記憶形成を阻害している可能性を示唆しており、短時間の脳卒中後に生じる記憶喪失の説明にもなるかもしれないとする。

今回の研究成果は、長時間持続するaLTPを説明するものであり、虚血後に生じる記憶喪失の回復治療に役立つ可能性があるとしている。
(波留久泉)



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