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農工大など、鉄系高温超伝導体で世界最高級の磁力を持つ磁石を開発

マイナビニュース / 2024年6月10日 18時47分

画像提供:マイナビニュース

東京農工大学(農工大)、九州大学(九大)、科学技術振興機構(JST)の3者は6月7日、機械学習を合成プロセスに活用することで、2テスラ(T)という世界最高レベルの磁力を持つ鉄系高温超伝導体の永久磁石を開発し、それを安定保持することに成功したと共同で発表した。

同成果は、農工大の山本明保准教授、同・德田進之介大学院生(研究当時)、同・石井秋光大学院生(研究当時)、同・山中晃徳教授、九大 総合理工学研究院の嶋田雄介准教授、英・ロンドン大学キングス・カレッジのマーク・エインズリー講師らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の材料科学全般を扱う学術誌「NPG Asia Materials」に掲載された。

現在、極低温への冷却には主に液体ヘリウム(沸点:絶対温度4.2K(約-269℃))が使用されているが、ヘリウム資源は需要増大のために世界的に不足している状況だ。そのためエネルギー効率の観点から、冷凍機による冷却でも超伝導状態となれる高温超伝導体の実用化が期待されている。

鉄系超伝導体は、超伝導を維持できる上限の磁場が従来材料の2倍以上と極めて高いことが大きな特徴で、これまでに1Tのコイル磁石磁場発生が報告されている。そこで研究チームは今回、工業的なセラミックス材料の合成プロセスで生産でき、製造しやすく、スケールアップも容易な多結晶型の鉄系高温超伝導体に着目したという。

多結晶型材料(セラミックス)は、大きさや形、向きの異なる無数の結晶から構成されていることからミクロな構造がとても複雑で、それが同材料の性能と密接に関わっている。今回の研究では、超伝導電流が流れやすいミクロ構造を得られる合成プロセスを効率的に探索するため、少数の事前データを基に、研究者主導のアプローチとデータ駆動型のAIによるアプローチをシームレスに統合したプロセス設計手法を構築し、研究を進めたとする。

1つ目のアプローチは、従来的な研究者の経験と勘に基づくもので、深層学習によるミクロ構造の解析と形成過程シミュレーションの知見など、AI技術も設計指針に採用された。2つ目のアプローチでは、AIによるデータ駆動型の最適化手法「ベイズ最適化」をベースに、プロセス設計向けにカスタマイズされたソフトウェア「BOXVIA」が開発され、それが用いられた。

研究者とAIは、磁力の起源となる超伝導電流性能をターゲットに、同じデータベースを共有しながらも、それぞれ独立してプロセス設計を進めたとのこと。研究者は電流特性のデータやミクロ構造などの知見を基に、AIは電流特性データの機械学習により、新しい合成プロセスを提案し、それに基づいて試料が合成されて特性を評価してデータベースを更新するという、一連の流れを繰り返した。このようにして最適な合成プロセスの条件を研究者とAIがそれぞれに見出し、これらの条件で2つの円盤バルク(塊)状の磁石が合成された。

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