京大など、RNAを用いたAND演算が可能な液滴コンピュータの開発に成功
マイナビニュース / 2024年6月10日 19時14分
実際にAND演算RNAモチーフから液滴が作製され、miRNAの入力に対する演算例として、乳がんのバイオマーカーである4種類のmiRNA(m1~m4)が用いられた。まず、m1およびm2に対するAND演算が実行された結果、顕微鏡観察により、AND演算RNAモチーフがRNA液滴を形成することが確認された。
次に、各入力の組み合わせの結果生じるRNA液滴の様子が観察された。すると、入力[1,1]の時は25分ほどで大半の液滴は溶け、最終的に見えなくなった一方で、それ以外の入力では、3時間半以上の観察を通じて液滴は溶解しなかったとする。これにより、RNAに特有の相互作用でも液滴を形成できるという今回の研究目的が達成された。
最後に、幅広い応用を可能にするため、RNA液滴の演算結果をもっと簡便かつ安価に検出する手法として、RNAとDNAをそれぞれ異なる色で染められる、安価な細胞染色液「メチルグリーン・ピロニン」を用いた手法も開発された。m1とm2の両方が加えられた場合は、RNA液滴が溶解するために染色は目視できず、それ以外の入力の場合は染色されたRNAの沈殿物が直接目視された。RNA液滴によるAND演算の出力結果を、高価な機器や試薬なしで検出することに成功したのである。
今回の研究成果は、がんの早期診断技術への活用に加え、結果を目視可能なことから僻地や発展途上国などでの病気、ウィルス感染診断の拡充にもつながるという。また、複数の論理演算を組み合わせたより高度な論理回路を組み込んだRNA液滴コンピュータへの展開も可能とする。さらに、液滴を構成するモチーフの配列をコードしたDNAを鋳型として細胞に注入して、細胞の転写機構を利用してRNA液滴を発現する将来的な技術への重要な足がかりも得られたとしている。
(波留久泉)
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