キヤノン、黒色のプラスチック片も高精度に選別できる装置の受注を開始
マイナビニュース / 2024年6月12日 7時25分
キヤノンは、リサイクル現場においてプラスチックの種類を判別する際に判別が難しい黒色のプラスチック片と、その他の色のプラスチック片を高精度に同時選別することができる「トラッキング型ラマン分光技術」を用いたプラスチック選別装置を開発し、第1弾製品となる「TR-S1510」を含む「TRシリーズ」として受注を開始したことを発表した。
プラスチックのリサイクルと選別方式の課題
我々の生活の中で廃棄されるプラスチックのうち、新たな製品の材料として再生利用できているのは約2割と言われており、その他は燃料や未活用のまま焼却されている現状がある。
2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が施行され、今まで容器包装のプラスチックが主なリサイクル対象だったものが、小型家電製品のプラスチックも対象となるなど、今後さらに多くの製品のプラスチックを高精度かつ生産性高くリサイクルできる技術が必要になることが予想される。
しかし、従来の方式である「近赤外方式」では、家庭用電化製品や自動車の内装に使用される黒色のプラスチックの可視光を通さず反射もしないため、ABSやポリプロピレン(PP)といった種類の判別が難しかったという。また、「中赤外方式」では黒色樹脂の選別はできるものの、白色と黒色の同時選別が難しく、選別法として十分とは言えないものとなっており、今後のプラスチックの再生利用に向けて、黒色を含む高精度なプラスチックの種類選別と選別作業の生産性向上が求められていた。
キヤノンが開発したプラスチック選別装置の特徴
そこでキヤノンが開発したのが、独自のトラッキング型ラマン分光技術を用いた、黒色を含むプラスチック片の高精度かつ高速な同時選別を実現する選別装置TRシリーズだ。
一般的に、ラマン分光方式によるプラスチックの判別では、レーザー光を1つひとつのプラスチック片に照射し物質の分子情報を取得するため、黒色プラスチック片を測定することもできるものの、黒色は散乱する光が少ないため、計測に時間がかかり、高速かつ多量の処理を行う現場では不向きとされてきたという。
しかし、同社はラマン分光方式と独自の計測・制御機器を組み合わせ、レーザー照射を走査するトラッキング型のラマン分光技術を開発することで、黒色も他の色も混ざり合った状態であってもプラスチック片の色に合わせた計測時間を確保することに成功し、高速かつ高精度な判別を実現したとのことで、これによりリサイクル現場の生産性向上とマテリアルリサイクルの最大化に貢献できるようになったという
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