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【書評】賛否真っぷたつ、「トランスジェンダーになりたい少女たち」はヘイト本? SNSが加速させる社会的流行の実態と、物足りない視点

マイナビニュース / 2024年6月12日 8時31分

シュライアー氏は、少女たちにトランスジェンダーが「流行っている」理由のひとつめとして、SNSをあげています。シュライアー氏と私はおそらく同世代ですが、我々がティーンだったころ、情報を得るとしたら、それは友達や家族、もしくは雑誌からですから入ってくる情報量はたかが知れていました。しかし、今はネットがあり、SNSが発達しています。アルゴリズムにより、SNSは関連する情報をどんどん送り込んできます。ですから、たとえば拒食症の少女が痩せるための情報を探すと、痩せる方法はもとより、親や医者に体重をごまかすかのテクニックまで手に入ってしまう。さらに、自分と同じ意見の人ばかり集まって、違う意見の人は排除されていくエコーチェンバー現象が起きて、社会経験の少ない少女たちは「みんなそう思っている」と思いこんでしまいがちです。思春期特有の目立ちたい心境もあり、「私もトランスします!」と宣言すると、コミュニティ内で賞賛されるので、我先にという雰囲気になってしまうと、SNSの罪を紹介しています。

シュライアー氏は、二つめの原因として、心理学のセラピストたちの存在をあげています。「あなたがトランスジェンダーだと思うのなら、そうなのね」とセラピストたちは少女たちを否定しません。相手の言っていることがどんなにおかしくても、それを否定しないのはすべてのカウンセリングの基本なのですが、この姿勢が「わたしはやはりトランスジェンダーなのだ」と勢いづかせてしまうと著者は考えているようです。

トランスを加速させる要因の一つとして、アメリカ特有の事情もあるのではないかと思います。個人的な話で恐縮ですが、アメリカに住む友人の娘さんが拒食症になった話をさせてください。個人の権利を尊重するアメリカでは18歳になると大人とみなされ、自分の治療は自分で決めることになります。拒食症は生命を維持できないほどにやせてしまっても、食べることを拒んでしまう病気です。体重が増えるくらいなら、死んでもいいと断言できるかというとそうでもなく、だからこそ、治療が困難であるとも言えるのです。拒食症患者は体重がある程度戻るまでには、半強制的に入院させるのが一般的な治療ですが、19歳に達した子が「私は入院したくない」と言えば、親といえども手だしはできないそうです。トランス手術も同様で、個人の権利が保障されている以上、本人がトランス手術をすると言えば、学校は本人の望んだ性別で扱い、親にできることは何もないのだと言います。
○本書における“物足りなさ”は

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