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名大など、月面探査車が昼夜の長期的な宇宙環境に耐えらる熱制御技術を開発

マイナビニュース / 2024年6月12日 20時47分

画像提供:マイナビニュース

名古屋大学(名大)と豊橋技術科学大学(豊橋技科大)は6月11日、月では昼夜の温度差が300℃ほどになるが、昼夜を跨いで活動するようなローバにおいては、日中は電子機器を冷却し、夜間は外部環境から断熱して電子機器を保温する切り替えが必要であり、それを可能とする新コンセプトの「ヒートスイッチデバイス」の技術的実証に成功したことを共同で発表した。

同成果は、名大大学院 工学研究科の西川原理仁准教授、宇宙航空研究開発機構(JAXA) 研究開発部門第二研究ユニットの宮北健主任研究開発員、豊橋技科大大学院 工学研究科の瀬下玄輝大学院生、同・横山博史教授、同・柳田秀記名誉教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、熱プロセスに関する全般を扱う学術誌「Applied Thermal Engineering」に掲載された。

月の1日は地球の約28日であり、昼も夜もおよそ2週間となる。月面はほぼ真空のため、日中の日向では100℃を超えるのに対し、夜間は-190℃程度まで下がり、およそ300℃にもなる温度差が生じる。つまり、日夜を跨ぐような長期間の活動を行うのであれば、その寒暖差の中でもローバの電子機器やバッテリーなどを適切な温度に維持する必要がある。

日中はローバが活動するため、電子機器が発熱する。ほぼ真空中の環境においては、その熱を積極的に放熱して冷却しなければならない。一方、夜間は電子機器が冷えすぎないよう、月面環境から断熱して保温する必要がある。つまり、昼の放熱と夜の断熱の切り替えを可能とする新たなヒートスイッチ技術が必須であり、可能な限りの省エネルギー性も求められる。

そこで研究チームは今回、省エネルギーでヒートスイッチを行える熱制御デバイスの開発のため、無電力で高効率に放熱できる「ループヒートパイプ」(LHP)と、低消費電力で冷媒の流動を制御可能な「電気流体力学(EHD)ポンプ」を組み合わせ、日中は無電力で電子機器を冷却し、夜間は低消費電力で極寒環境との断熱を実現する、新コンセプトの熱制御デバイスを考案することにしたという。

LHPは、多孔体内で生じる毛細管力を駆動力とし、電力なしでも小さな温度差で熱を長距離輸送できるデバイス。またEHDとは、絶縁性液体に高い電圧を印加すると流動が起きる現象のことで、電極を流路に配置するだけでポンプにすることができる。今回のデバイスでは、LHPの液管部にEHDポンプが組み込まれた。日中は、EHDポンプがオフとなってLHPは通常動作し、ローバ内の発熱を蒸気でラジエータに輸送し、そこから宇宙空間にふく射で放熱する。そして蒸気は液に凝縮し、ローバ内の蒸発器に戻り再度吸熱する。この作動流体の循環は、蒸発器の多孔体で発生する毛細管力によって行われるため、電力は不要なのである。

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