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東北大など、0.1~100ナノ秒の幅広い時間分解能で原子運動の測定を実現

マイナビニュース / 2024年6月19日 15時46分

さまざまな波長が混ざった放射光のうち、いくつかの特定の波長だけを取り出し、分光器を使ってその波長分布を観測する場合、それぞれの波長のピークが連なることで、歯が複数ある櫛のような形に見える。それに対して従来法では、その櫛の歯が1本しかないスペクトル構造が測定に用いられていたという。この時、歯の固有の幅が原子運動の時間の測定分解能を、つまり原子の運動を測ることができる時間域を決めていた。今回の研究では、X線領域でスペクトルの櫛型の構造を作り出すことで、新しい測定系が、櫛の歯の幅から決まる時間分解能だけでなく、櫛全体の幅から決まる新しい別の時間分解能を持つことが発見された。さらに、歯が沢山あることで、櫛の歯の幅から決まる時間分解能の測定も、歯の数が多い分だけ効率的に行えることも同時に発見されたとした。

そして、研究チームは2つの分解能を持つ技術を開発。同手法が0.1~100ナノ秒という従来法に比べてとても広い時間領域において、原子・分子運動の効率的な観測が可能であることを、典型的な高分子材料(ゴム)を用いることで実証することに成功した。

従来の放射光技術では、1つの測定に何週間もかかるため、実質的に原子ダイナミクス測定は不可能だった。しかし、今回の技術なら約100倍も効率良く測定できることから、その測定が現実的になったとする。なお、精密な原子・分子構造の同時測定の実現は、SPring-8の加速器を駆動させる高周波周期と、CITIUSの露光周期を100万分の10以下で精密に合致させる高精度同期システムの開発が基礎になったとしている。

これまで、ナノ秒近辺での原子・分子・ナノ構造の運動性の測定には、中性子が用いられていた。しかし同位体置換が必要など、測定する物質に特殊な条件が必要な場合があり、広範な材料に対する研究が妨げられていたという。今回開発された技術により、ゴム、電池、金属ガラス、液晶、化粧品など、数多くの産業材料や生体分子などにおいて、重要な原子・分子運動を内部まで非破壊で、また特殊な条件を課すことなく調べることが可能となった。これにより、今後の材料開発や生命現象の機構の理解が大きく加速するとしている。
(波留久泉)



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