48歳で納棺師なった女性の“生きがい” 故人の遺体の映像も見守った中村佳穂「その家族を知られたような気持ち」
マイナビニュース / 2024年6月22日 18時0分
「私の母は子どもに関わる仕事をしている人で、人に奉仕することが生きがいのタイプの人なんです。家族で旅行に出かけた記憶はほぼなくて、自分のために贅沢をしてこなかった人でした。子育てがひと段落して、新たに自分の人生を選択するときに誰かをサポートする仕事を選んだ陽子さんを見ていて母を思い出しながら映像を見ていました」
故人の遺体を持ち上げるなど、慣れない体力仕事に汗を流し、思うようにできない自分の不甲斐なさに落ち込む陽子さん。それでも現場を重ね、徐々に自信をつけていく。そんな思いを、仕事終わりで車を運転しながら助手席のディレクターに吐露する横顔は、まさに生きがいが伝わってくるもので、「幸せというものは、お金とか自分のための楽しみじゃないところにちゃんとあるんだというのを、改めて感じました」と語った。
●生と死の間のラインは、どこにあるのか
納棺師という職業に密着しているため、今回の番組は故人の遺体を映しており、そのたびにテロップで「この後 遺体の映像が流れます」と注意喚起している。多くの人が身構えてしまう場面だが、中村は違った目線で受け止めていた。
「私は、生と死の間のラインというのが、どこにあるのか不思議に思っているんです。魂が抜けてしゃべらなくても、そこにある肉体は思い出のものですし、その人と一緒に食べたものが肉や骨としてまだそこにある状態ですよね。みんな死というものを経験していないから、知らないものに対して怖いという感情があったり、大切な人を失う悲しみから触れたくない感情があるのはもちろん誰にでもあると思います。でも私は、遺族の方たちが生前の思い出をお話しされているのを見て、ちょっとその家族を知られたような気持ちで、少し温かい気持ちにもなりながらナレーションを読んでいました」
○『ザ・ノンフィクション』は「バランスが本当に絶妙」
今回のナレーション収録では、台本に音符を書き込みながら臨んでいた。その理由を聞くと、「自分が読んだテンションから、スタッフさんに“もっと低く”と指示されると、基準が分からなくなってしまうんです。音符があると音が決まっているので、その音符のところにすぐ戻って、“これが今言われている低いところなんだ”と理解できる」と、ミュージシャンならではの手法を駆使していたことを教えてくれた。
この手法は、声優・演技初挑戦で主人公役に挑んだ映画『竜とそばかすの姫』(21年)の際に編み出したもの。「コロナの時で、ブースに2人しか入れなかったのですが、相手に台本にすごく書き込んでいる声優の方がいたので、私もたくさん書き込んで次の日に行ったら、今度は台本真っ白の人で。毎日影響を受けていたんですけど、一つの解決法として音楽のようにやろうと思い始めて音符を書き込むようになったら、一気にやりやすくなりました」とのことだ。
『ザ・ノンフィクション』に対して、「入り込みすぎて“だからこの人は素晴らしい!”というところに行ってしまうより、みんなが見て何を思うのかが大事だと思うんです。だから、俯瞰的な要素と、その人を見守る要素とのバランスが本当に絶妙な番組だと思っていました」と印象を持っていた中村。今回の収録では、「感情的になってしまわないようにと考えつつ、見守るような気持ちで、ナレーションしました」と明かした。
●中村佳穂1992年生まれ、ミュージシャン。20歳から京都にて音楽活動をスタート。2021年7月に公開された細田守原作・脚本・監督のアニメーション映画『竜とそばかすの姫』の主人公すず/Belleの声、うたを担当し、同年末、millennium parade×Belleとして『第72回NHK紅白歌合戦』に出演。最新アルバムは2022年3月リリースの『NIA』。
(中島優)
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