東大など、地球の地下約2900kmの化学的不均質は水が原因ではないことを解明
マイナビニュース / 2024年6月25日 19時14分
加熱後の試料に対し、まず、大型放射光施設SPring-8でX線回折測定を行い、SiO2相の結晶構造が確認された。次に、加熱箇所の断面が切り出されて分析が行われた。すると、中心に急冷凍結された「シリケイトメルト」、その周りをSiO2相が覆う構造が得られた。その後、北大の同位体顕微鏡を用いて試料断面の水を定量した結果、下部マントルの圧力条件下で、圧力が上がるにつれてSiO2相中の水の量が多くなり、マントルの底でも2wt%の水を保持することが突き止められたとする。
今回の研究成果は、沈み込んだスラブはCMB領域でも脱水せず、そのままマントルの浅い部分へリサイクルしてくることを意味しているという。ゆえにCMB領域の化学的不均質は、水とは無関係と考えられるとする。代わりに、地球形成時のマグマオーシャン(地球全体がマグマ状態だった)に起因する可能性があるとした。固体のマントルに比べて、マグマは圧縮性に富むため、マントル深部ではマグマが固体マントルよりも重たくなり、マントルの底へ沈む可能性がある。そのようなマグマは、表面を覆うマグマオーシャンとは別に、固体マントルの下にもう1つの基底マグマオーシャンを形成することが推測される。その結晶化の後期に形成された、鉄に富む重たい固体物質が未だにマントル最深部に存在することが、大きな化学組成の原因と考えられるとした。
今回の研究により、マントル深部における水の大循環が解明された。水を持つSiO2相中では、水素が超イオン状態にある可能性があり、その場合は大きな電気伝導度を示すことが期待されるという。研究チームは今後、そのような電気伝導度を実験室で決定し、下部マントルの電気伝導度の観測結果を使って、水を持つSiO2相の分布、つまり下部マントルにおける水の分布を詳細に明らかにしたいとしている。
(波留久泉)
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