極地研など、北海道で目視された異常に明るい赤いオーロラの謎を解明
マイナビニュース / 2024年6月25日 19時43分
そして、今回の磁気嵐の規模が大きくなかったという最大の特徴(異常)については、その磁気嵐の原因となった太陽風の密度が極めて濃かったことと関係していたことが突き止められた。
地球の磁気圏は高密度の太陽風を受けると圧縮される。つまり、全体的にサイズが小さくなるのである。今回の太陽風の密度は50[/cc]を超え、通常は磁気圏中に位置する静止衛星の軌道(高度約3万6000km)が、磁気圏外になってしまうほど縮小したという。磁気嵐は、磁気圏にプラズマを溜めこむほど発達するが、異常に小さくなった磁気圏からはプラズマが漏れやすくなるために、磁気嵐の発達が抑制されてしまったことが考えられるとした。
オーロラが最も明るく輝くのは、磁気嵐中に発生する「サブストーム」の時だ。サブストームとは、太陽風から磁気圏への電磁エネルギー流入が大きくなると発生する、爆発的なエネルギー解放現象のことである。その際、磁気圏-電離圏間の電流が急激に発達し、オーロラ発光が爆発的に広がる(オーロラ爆発)。今回の場合には、通常よりも地球に近い位置でサブストームが発生したことも判明し、これも異常に小さくなった磁気圏の影響と考えられるという。
この「近い」オーロラ爆発が非常に明るいオーロラを生み出し、発光高度が高く、それがたまたま北海道から観測しやすい絶好のタイミングで発生。このように、いくつもの条件が重なったことで、磁気嵐の規模が大きくなくても、北海道から肉眼で明るいオーロラが見られたとする。
なお、太陽風の密度がこれほど濃かった理由や、それを事前に予測できるのかという点については、今後の正確な宇宙天気予報のためにも重要な研究課題とする。
また日本の古い記録では、オーロラは天変地異の一種として認識され、「赤気」と記されている。これまでは磁気嵐の規模との対応で考えられていたオーロラの状態というのも、磁気嵐中のサブストームという、もう一段複雑で現実的なプロセスも考慮して「赤気」の古記録を読み解く手がかりを得たともいえる研究成果とした。
それに加え、今回は市民科学者による助力が大きかったとし、今後も市民科学者の貢献によって予期せぬ発見が期待されるとしている。
(波留久泉)
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