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富山大、睡眠中の脳で行われている推論の演算を神経細胞レベルで解明

マイナビニュース / 2024年6月26日 19時56分

続いて、睡眠中の前帯状皮質の神経活動を促進することで、推論成績を向上させられるのかが調べられた。10日間の不完全な前提ペアの学習を遂行したマウスを用いて、学習後のノンレム/レム睡眠中の前帯状皮質の神経回路が、人為的に活性化された。活性化なしのマウスは正しく推論できなかったが、レム睡眠中に活性化されたマウスはテスト2~4のいずれでも80%以上の高い推論成績を示したという。一方、ノンレム睡眠中の活性化では促進されなかったとした。これらの結果は、ノンレム/レム睡眠中のどちらの神経活動も推論に必須だが、それぞれが異なる機能を果たしていることが示されているとした。

そして、それぞれの睡眠の機能の相違を解明するため、前帯状皮質の神経細胞の活動が測定された。B・Dペアの推論テスト2・3において、マウスがBを選択する決断をした時に出現する神経細胞の共活動(推論)パターンの検出が行われ、正答Bの選択直前に現れる場合もあれば、スタート地点からBに向かう途中に現れる場合もあったという。また推論パターンはB・Dペアのテスト時に初めて出現するのではなく、前提ペアの学習終了時から徐々に出現し、特筆すべきはレム睡眠中に強く検出された点とした。つまり、推論の正答はレム睡眠中に脳内で形成されていたのである。なお、推論パターンを構成する神経細胞は、前提ペアに対応する神経細胞とは異なっていたとする。

さらに、推論パターンが脳内でどのように形成されていくのかを知るため、4つの前提ペアそれぞれの学習時に活動した神経細胞グループの間における共活動が調べられた。ノンレム睡眠中に高い共活動が示されたのに対し、覚醒時やレム睡眠中では共活動は低いままだった。異なる記憶に対応する神経細胞間の共活動は、記憶同士を照合し関連づけることが知られている。つまり、ノンレム睡眠は各前提ペア間の関係を照合して全体の階層性を形成していることが考えられるとした。推論パターンを構成する神経細胞は、レム睡眠中に各前提ペアの細胞と高い共活動が示されており、レム睡眠中に脳が全体の階層性からBとDの関係を抽出することで推論していることが示されているとした。

以上から、まず前提ペアに関する情報は、お互いが独立して散在する情報として蓄えられ、その後のノンレム睡眠中に、各前提ペアに対応する神経細胞が共活動し、前提ペアの情報を整理して全体の階層性を構築。続いてレム睡眠中には、ノンレム睡眠中に構築された全体の階層性からB>Dの推論知識を導き出すと結論付けられた。レム睡眠中に観察された推論パターンと各前提ペア細胞の間の高い共活動は、前提ペア細胞が新しい神経細胞群をリクルートして推論パターンを創出している過程を表していることが想定されるとした。

今回の研究成果により、今後、潜在意識下で脳がどのような神経活動を行って、覚醒時には実現が困難な情報処理を行っているのかという疑問に実験的にアプローチすることが可能となったとしている。
(波留久泉)



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