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窓辺の小石 第172回 画面の光はすべて漢字

マイナビニュース / 2024年6月28日 17時16分

なお、ROMを直接メモリ空間に割り当てない方法を使えば、8 bit CPUでも漢字ROMを使うことは不可能ではなかった。後年、バンク切り替え機能などを持つデバイスが製造可能になり、8 bitマシンでも漢字ROMを扱えるようになった。たとえば8 bit CPUのZ-80を搭載したエプソンのHC-40やHC-88といった機種は、オプションで漢字ROMが用意され、ワープロソフトが利用できた。あるいは、バッテリで動作するポータブルワープロ専用機が登場したのもこの頃だ。しかし、こうしたマシンの登場は、PC-9801などの国産16 bitマシン登場後のこと。先に、16 bitのデスクトップマシン用に漢字ROMなどが作られ、その成果を利用できるようになったからだ。

当時は、電子的に設計を行うことも未成熟で、ハードウェアの設計は、人手に頼っていた。LSIを作るにも、TTLで回路を組むにしても、設計作業の多くは人手で行う必要があった。そういうこともあり、今から見れば、ハードウェアの進歩もゆっくりだった。

漢字を表示するもう1つの方法が漢字コンソールだ。これは、ビデオメモリに漢字に対応したコードを書き込むと、漢字が表示されるもの。漢字ROMと同じように漢字のグラフィックスパターンを内蔵したキャラクタ・ジェネレーター(Character Generator。CG)を使う。こちらは、メモリも少なく、漢字のカラー表示や高速なスクロールも可能だった。ただし、ハードウェアが複雑になる分、コストが上がった。主にビジネス向けの機種で採用された。この頃の漢字コンソールは、漢字CGが漢字ROMを兼ねており、グラフィックスモードの場合、漢字CGから漢字パターンを読み出して、描画を行っていた。こうしたハードウェアは、日本語特有のものなので、国内メーカーのマシンにしか装備されていない。

当時作られたシフトJISコードは、漢字コンソールなどに対応しやすく、かつ、漢字のことを想定せずに作られた米国製ソフトウェア(MS-DOSやBASICインタプリタ)などが対応しやすい「折衷」方式である。

のちにアスキー社が中心になって開発した、JEGA(IBM PCのEnhanced Graphics Adapterを日本語化したもの)では、ビデオメモリに書き込む表示用コードがシフトJISコードそのものだった。このAXでは、米国製ソフトウェアでもシフトJIS文字列を出力させると、そのまま画面に表示することができた。とはいえ、あくまでも表示できるというレベルであるため、たとえばカーソルは漢字だと半角文字単位で動き、2バイト文字の片側だけ削除してしまうこともあった。AX規格は、日本にAT互換機を持ち込む中で一定の役割は果たしたが、果たして、ここまでやるべきだったのかどうか。結果的にソフトウェアのみで漢字を表示させるDOS/V方式が普及した。

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