東大など、100GPaの超高圧下における氷の水素結合の直接観察に遂に成功
マイナビニュース / 2024年7月1日 14時13分
水素結合の対称化を観察するには、水素原子の分布をとらえることができる中性子回折実験が最も直接的な手法といえる。しかし、中性子回折実験を行うには通常数mm3程度以上の大きな試料が必要となり、そのような大きな試料に数十GPaという圧力をかけるのは極めて困難だ。そのため、これまで中性子回折実験が行える圧力は30GPa程度にとどまっていた。そこで研究チームは今回、愛媛大で開発されたダイヤモンドを凌ぐ強度を持つナノ多結晶ダイヤモンドに注目。それを高圧セルの素材として使用することで、比較的大きな試料を高圧下まで加圧できる技術を開発したという。
今回の研究では、試料からの微弱な信号を取り出すため、世界最小クラスの試料見込み幅を持つ受光コリメータを備えたJ-PARCの超高圧中性子回折装置「PLANET」が用いられた。これにより初めて100GPaを超える圧力までの氷における中性子構造解析が実現され、その結果およそ80GPaを超えた圧力下で、氷中の水素結合が対称化することが確認されたとした。
水や氷のような身近な物質でも、超高圧下における構造や物性はまだ完全にはまだよくわかっていない部分も多い。このような超高圧条件は、実験室でのみ実現できるような現実離れしたものでは決してなく、地球や惑星の深部ではむしろどこにでもある条件といえる。たとえば近年、氷VIIは、地球深部から上昇してきたダイヤモンド中の包有物として発見されている。研究チームは今後、今回の研究で開発された手法を高温下あるいは低温下でも適用できるように改良することで、さまざまな温度圧力条件にある地球深部や宇宙空間の氷の状態を解明できるようになることが期待されるとしている。
(波留久泉)
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