横国大、コーヒー粕から52%という高収率でCNFの一種を得ることに成功
マイナビニュース / 2024年7月1日 15時38分
今回の研究では、鎌倉市内のオフィスやカフェから出たコーヒー粕を原料として、コーヒー粕乾燥重量の約半分を占めるヘミセルロースとセルロースのみからなる成分であるホロセルロースまで処理した後、高圧下物理的な衝撃によって水中で微細化。その結果、52%という高収率でHCNFを得ることに成功したという。
このHCNFは、繊維幅平均2~3nm・繊維長平均0.7~1μmに分離していることが、原子間力顕微鏡による観察で明らかにされた。これは、最も微細なCNFが得られるTEMPO触媒酸化法から得たのと同水準の微細化度だったとする。一般的に機械的なナノ化処理で得られるCNFは、強固で不均一な水素結合が原因で数十nm幅程度までしか細かくできないとされる。しかし、コーヒー粕に含まれるヘミセルロースが水に膨潤しやすい性質を持っていたことから、2~3nmへの微細化が促進されたと考えているとする。
次に、X線回折法と固体核磁気共鳴分光法を用いて構造解析が行われた。その結果、HCNF上にはコーヒー粕の主要なヘミセルロースであるマンナンが結晶化した状態で含まれ、コーヒー粕由来HCNFがこれまでに報告のない新しい特徴を持つことが突き止められた。
さらにコーヒー粕由来HCNFを凍結後乾燥させると、発泡スチロールのような形状となったという。これに再度水を加え、手で振とう(ハンドシェイク)させると、30~50nm幅まで再び分散することも判明。凍結乾燥させたHCNFには、ハンドリングが容易であること、保存料フリーで長期的な保存が可能であること、輸送時の容量を飛躍的に少なくできることなどの優れた点が挙げられるとした。
今回開発されたHCNFは、食品廃棄物のコーヒー粕に対する新しいアップサイクル技術だ。研究チームは現在、高度に微細化され、マンナンを含む構造的特長を活かし、食品用乳化安定剤としての利用に向けたさらなる研究を行っているとのこと。その一方で、コーヒー粕の回収経路の確立や乾燥工程が解決すべき課題として挙げられるとする。そしてHCNFについては、植物由来の環境に優しい乳製品、肉製品、ケーキ生地などの食品添加剤や化粧品などへの利用も期待されるとしている。
(波留久泉)
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