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JAXAなど、超小型衛星用宇宙推進システムの理論モデルの構築に成功

マイナビニュース / 2024年7月1日 16時18分

今回の研究では、高圧ガスを用いることなくイオン液体を貯蔵し、プラズマを生成することなく、推進剤となるイオン液体から直接イオンを放出して推力を発生させることで、大幅な効率改善を図る技術の確立が目標とされた。イオン液体を浸透させた多孔質エミッタの表面に高電界を加えると、イオンを効率よく放出させることが可能だ。そのため、世界中で宇宙推進機としての利用を目指した研究開発が進められているが、多孔質表面に存在するイオン液体界面からイオンが引き出される物理現象はマルチスケールにわたって複雑なため、どれだけのイオンが放出されるのかを予測するには時間を要する数値シミュレーションが必要であることが課題だったという。

今回は、まず約1mmの微小な突起形状を持つ多孔質エミッタの形状を正確に計測し、その形状から数値計算で表面電界が算出された。一方、真空装置内でイオン液体を含浸させたエミッタ表面に高電界を与えることで、放出されるイオンを電流値として直接計測がなされた。これらの電界と電流密度の関係を理論モデルで定式化し、マイクロスケールとナノスケールの異なる多孔質を用いて多孔質抵抗を変化させることで、イオンの輸送の違いがイオン放出に与える影響を調べることができたとする。

そして、エミッタ内部のイオンの流れがイオン放出を決定していることを示唆する先行研究から着想を得て、多孔質構造によって抑制されるイオンの輸送をオーム則に基づく簡易なモデルで表し、しきい値電界を超える領域からイオンが放出されるとする定式化が行われた。その結果、複雑な表面の状態を考慮しない簡易なモデル化にも関わらず、モデルから予測される電流値は実験値と非常に良い一致を示すことに成功したとのことだ。

研究チームによると、今回構築された理論モデルを用いることで、計算コストを劇的に抑え、スラスタの形状設計に対する放出イオンを予測することが可能になるという。さらに、今後の推進機開発に今回の理論モデルを活用することで、高性能化へ向けた設計の効率化が期待されるとした。また今回のスラスタが実用化されれば、超小型衛星を使ったコンステレーションや深宇宙探査、フォーメーションフライト(編隊飛行)の実現が期待されるとしている。
(波留久泉)



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