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吉川明日論の半導体放談 第307回 米中関係で注目されるHygonのx86プロセッサー

マイナビニュース / 2024年7月5日 13時35分

AMDはPentium互換のK6シリーズを最後に、Intelとのハードウェア互換戦略を捨てて、独自のアーキテクチャーの開発でIntelの技術を超える方向性を目指した。x86命令セットは法的権利として使用しながら、ピン互換・マザーボードなどのハードウェア互換を捨てるということは、Intelが打ち立てたインフラとは独立したサポートインフラを最初から作る事を意味し、ビジネス的にはリスクの高い戦略であったが、現在のAMDのポジションはこの大きな決断なしには考えられなかった。
中国Hygon社の存在感が上昇

米中の技術覇権争いが激化する中、中国政府が政府関係機関向けのPC/サーバーにおいてAMD/Intel製のCPUの使用を禁止するガイドラインを発表したという報道があった。

AMD/Intelが供給するx86プロセッサーは、世界中のPC/サーバーの心臓部となっていて、いくら国産化を進める中国でも多くのインストールベースを築いている。大変に唐突な感じがしたので、少し調べてみると、この背景にはHygonという中国に本社を置くx86命令セットを実装したCPUをデザインするファブレス企業があり、その製造をSMICが請け負っているという。

Hygonがどういう方法でx86命令セットの権利を取得したかについては、AMDが2016年に中国科学院(THATIC)と共同出資の合弁会社を設立し、x86プロセッサーの製造をTHATICが国内で販売するサーバーのCPU開発に利用することを認めるライセンス契約を締結したことに由来するらしい。Hygonはその際に設立されたいくつかのジョイントベンチャーの1つである。この契約によりHygonはx86プロセッサーの自社設計を法的に認められた形になり、AMDのZen1ベースのプロセッサー製品を供給している。

しかし、今回の中国政府のガイドラインがこの契約と今後のHygonの後継品開発にどういう影響を与えるかは不明である。現在のところIntelが訴訟を起こしたという報道も見られないため、米中の技術覇権競争の影響のとばっちりを受けたAMD/Intelが今後どう出るかは注目したいところである。
ITの技術インフラを着々と国内に確立しつつある中国

中国はシリコンバレーを中心とする米国ハイテク企業が長年熾烈な競争を経て構築したITの技術インフラを着々と国内で育成しつつある。

その多くは、世界最大の中国市場に参入するための条件として中国政府が提示した技術移管の延長にあることは確かだ。スマートフォンの基本OSシェアではApple/Androidを凌駕するとも言われるHuawei、そのHuaweiが使用する半導体は7nmプロセスレベルの製造技術を実現しているSMICが支えている。米中の技術覇権競争は政府間の規制の応酬でさらに激化する様相だが、皮肉にもそれはITビジネスでの技術革新を助長する結果を産んでいる印象が強い。

吉川明日論 よしかわあすろん 1956年生まれ。いくつかの仕事を経た後、1986年AMD(Advanced Micro Devices)日本支社入社。マーケティング、営業の仕事を経験。AMDでの経験は24年。その後も半導体業界で勤務したが、2016年に還暦を機に引退を決意し、一線から退いた。 この著者の記事一覧はこちら
(吉川明日論)



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