バイプレイヤーの泉 第135回 『虎に翼』滝藤賢一、この人の芝居には熱き血潮が流れる
マイナビニュース / 2024年7月9日 6時0分
幼少期から熱血ドラマオタクというエッセイスト、編集者の小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第135回は俳優の滝藤賢一さんについて。俳優の中年ブレイクが叫ばれる昨今。彼はその第一人者なのかもしれない。長く劇団に所属をして、人気ドラマで全国周知となって、現在の活躍がある。名前を聞いて思い出すのは、歌舞伎の睨みも真っ青の眼力。そこから漏れる、熱き血潮。現在出演中、『虎に翼』(NHK総合)での演技が最高すぎたので、滝藤さんを褒めちぎりたい。
○滝行にピンピン体操とは……
現時点で令和ヒットドラマと言っても過言ではない、大人気の『虎に翼』。私のような年柄年中、テレビにかじりついているオタクはまた別として、普段ドラマを見ない面々が朝の15分間に酔狂するのは、『あまちゃん』(2013年)以来ではないだろうか。
「正論は見栄や詭弁が混じっていてはだめだ。純度が高ければ高いほど、威力を発揮する」
寅子の上司である桂場等一郎(松山ケンイチ)の提言のごとく、寅子は自分の仕事に誇りを持って、真っ直ぐに進んでいる。その後ろ姿にまた私たちは歓喜、一気一憂している。放送終了まで2カ月を切った。毎朝、マラソンの伴走のように見守っている。
そんな人気作にとんでもないキワモノが登場した。それが滝藤さん演じる、ちょび髭をたくわえた多岐川幸四郎である。滝行シーンからの登場には度肝を抜かれたし、部下全員にやらせるピンピン体操には笑った。(今では考えられないが)正月も深夜も関係なく部下を引っ張り回し、思いついた企画は仕事量の負担も考えずにどんどん遂行。これは演出ではなく、モデルとなった宇田川潤四郎氏による実際のエピソードらしい。
多岐川は一見すると迷惑甚だしい行動を取っているけれど、こういう人は人生を振り返った時に印象に残る。何かを教示してくれる存在だ。
○彼の演技はいつだってコミカルと本気の間
「人間、生きてこそだ。国や法、人間が定めたものはあっという間にひっくり返る。ひっくり返るもんのために、死んじゃあならんのだ。法律っちゅうもんはな、縛られて死ぬためにあるんじゃない。人が幸せになるためにあるんだよ。幸せになることをあきらめた時点で矛盾が生じる」
素っ頓狂なことを繰り返しながらも、実は性根の熱い多岐川。なんだか滝藤さんご本人のイメージと似ている気がする。
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