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近大、薬剤を高効率に取り込みがんの増殖をほぼ完全に抑制させる手法を開発

マイナビニュース / 2024年7月16日 12時32分

画像提供:マイナビニュース

近畿大学(近大)は7月12日、独自に作製した抗体が標的であるがん細胞に結合した後、高効率に細胞内に取り込まれる性質があることを見出し、そのメカニズムを明らかにすると同時に、同抗体に抗がん剤を搭載して担がんモデルマウスに注射した結果、がんの増殖をほぼ完全に抑制できることがわかったと発表した。

同成果は、近大 病理学教室の萩山満講師、同・米重あづさ講師、同・伊藤彰彦主任教授らの研究チームによるもの。詳細は、ドラッグデリバリーシステムに関する全般を扱う学術誌「Journal of Controlled Release」に掲載された。

薬剤を効率的にがん細胞まで届けて攻撃を行える医薬品である「抗体薬物複合体」は、運び屋として機能する「抗体」、がん細胞を攻撃する「薬剤」、抗体と薬剤を結合させる「リンカー」の3要素で構成されている。その中でも抗体は、がん細胞の表面にある特定のタンパク質に結合してその内部に取り込まれる仕組みで、「薬物送達ベクター」とも呼ばれる。抗体薬物複合体のがん細胞に対する効果は、がん細胞に抗体が取り込まれる効率に依存しているが、これまでこの取り込み効率に関する詳細な研究は行われていなかったという。

細胞膜を貫通する膜タンパク質「CADM1」は、構造上は免疫グロブリンスーパーファミリーに属しており、細胞同士を結び付ける接着分子として機能している。長年にわたって同タンパク質を研究しているのが研究チームで、近年は、独自のCADM1抗体を用いてがんや神経系疾患の治療法を確立することを目指した研究を進めているという。その一環として、先行研究においてCADM1に結合する「抗CADM1抗体」が、抗体薬物複合体に用いる抗体として有用であることを突き止めていた。しかし、そのメカニズムの詳細を解明できてはいなかったため、今回の研究では、その課題の解決を目指すことにしたとする。

研究チームはこれまで、複数の抗CADM1抗体を作製済みで、先行研究においてはそのうちの抗体AとBの2種類が、がん細胞の増殖抑制に効果を発揮することを明らかにしていた。そこで今回は、まずその2種類についてのシーケエンス解析を行うことにしたという。その結果、それらは同様にCADM1に結合する、IgY(抗体A)とIgM(抗体B)という別の機能を持つ抗体であることが判明した。

次に、抗体Aを蛍光色素で標識した上で細胞に添加し、蛍光を検出することで抗体Aの局在が調べられた。細胞がCADM1を発現している場合には、抗体Aは添加後1時間以内にその細胞の表面に集積したという。その後、10時間かけて少しずつ細胞の内部に移動(内在化)していったが、内在化したのは全体の抗体の一部だったとした。

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