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阪大など、レーザー駆動中性子源で飛行時間計測装置の大幅な小型化を実現

マイナビニュース / 2024年7月18日 19時12分

元素(同位体)には特定のエネルギーで中性子を極めて強く吸収する性質(共鳴吸収)があり、このエネルギーは元素の種類に依存する。そのため、この共鳴吸収が起きたエネルギーから元素の種類を特定することが可能だ。今回の試験では、複合材料を模擬するためにタンタルと銀の試料が設置され、1発の中性子パルスを透過させることで、瞬間的に非破壊で元素の種類の識別に成功したという。

さらに、タンタルのみ温度を上昇させて中性子パルス照射を行ったところ、タンタルだけ信号の幅が温度に対応して太くなることも確認されたとのこと。温度の上昇によってタンタル試料中の原子核の熱振動が激しくなり、ドップラー効果によってタンタルの共鳴吸収の幅が太くなるためである。室温から摂氏620度の複数の温度で計測が行われ、温度と信号の太さ(共鳴幅)の関係が理論で再現できることが確かめられたとした。

従来の飛行時間計測法は、中性子を10~数十mという長距離を飛行させる必要があったが、今回の手法ではレーザーを使って短いパルス幅の中性子を生成できるため、わずか1.8mの短距離(加速器駆動中性子源の場合の10分の1程度)でも計測が可能になったという。中性子検出器の信号を直接オシロスコープで記録して解析する手法で、それぞれのパルスごとの中性子のエネルギースペクトルが計測された。このような手法で、高輝度パルスに対して距離を短くすることで、より多くの中性子を一度に計測でき、瞬間的な約1000万分の1秒での温度計測につながったとする。

今回開発された飛行時間計測装置の長さは1.8mであることから、将来的にはレーザー駆動中性子源を研究室や工場などにも設置できる可能性があるとする。また、1回の計測データがわずか約1000万分の1秒で得られるため、従来の数分~数時間から時間を大幅に短縮できるという。今回の技術により、短時間で発生する現象や、時間的に変化する現象の温度も計測できるとした。

研究チームは今回の技術によって、動作中のLEDやパワー半導体、充電池などの内部にある特定の元素の温度をピンポイントかつ瞬間的に計測可能となり、異常な温度上昇や、過酷条件における異常発生メカニズムの解明など、現代文明に欠かせない、さまざまな機器の性能向上や信頼性の向上に役立つことが期待されるとしている。
(波留久泉)



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