【後編】歴史に残るシリーズ 第9期叡王戦五番勝負第1局~第4局を振り返る
マイナビニュース / 2024年8月16日 11時30分
△8八銀打が好判断。7七銀を消すのが急所で「本譜で銀2枚を渡すものの、後手玉がいきなり詰まされることがなさそうなので選びました」と伊藤。
△6六歩(第7図)で先手受けなしと思われたが第二弾の勝負手が飛んできた。
○魔法のような手順
▲4三桂の王手が豊富な持ち駒を生かした迫力満点の勝負手。以下、△同金▲2三桂△同金▲3二銀△同玉▲4三歩成△同馬▲2一銀と進み、圧倒的な詰将棋力を持つ藤井の連続王手に、控室では「藤井さんに王手されたら怖い」の声も挙がった。
▲2一銀に対して伊藤の第一感は△同玉だったが、以下「▲4一飛成に①△3一桂は▲3二銀△同馬▲1二金(C図)から詰み。②△3一銀は▲4三竜のときに先手玉の詰みが見えなかったです」と言う。
本譜は消去法で△3三玉を選んだが、▲5五馬~▲6六飛成(第8図)と進んだ局面は、先手玉への詰めろが外れたうえに、竜と馬が強力な守備駒となった。
アベマで本局の解説をした中村太地八段は「受けがなかったはずの先手玉が安全に。魔法のような手順」と驚いた。続けて「ここでの後手の指し手の難易度が高かったと思います。ここからの指し手の正確さが『勝因』となりました」。
○伊藤が叡王獲得に王手
△6七歩が好手。▲同竜は△7五桂の追撃がある。本譜は▲5九玉と逃げたが、くさびが入ったのが大きい。以下△4七桂から王手を続け、△3六銀成▲同玉△3五銀が自玉を安全にしながらの寄せ。
▲3七玉に△2五桂を見た勝又七段は「この桂が最後に跳ねたんだね」とポツリ。
77手目の▲1四香以降、いつでも取られてしまう状態にあった1三桂が、最後の寄せで大活躍した。「勝ち将棋鬼のごとし」だ。
△1五桂(投了3図)が詰めろ逃れの詰めろで決め手。
藤井は大きく息を吐き、姿勢を正してから投了を告げた。
大激戦を制した伊藤が、2勝1敗で叡王獲得に王手をかけた。藤井が初めてカド番のピンチを迎えた次局は、大注目の一戦となる。
最後に、糸谷八段は「伊藤さんが秒読みで正確な寄せでした。『糸谷』なら逆転していました」と本局を総括した。
(将棋世界2024年7月号より 第9期叡王戦五番勝負第3局 勝ち将棋鬼のごとし/【記】竹内貴浩)
●第9期叡王戦五番勝負第4局 ポスト八冠時代の光景
○第4局:藤井叡王、負ければ失冠の一局をしのぐ 決着は最終局へ
もはや後がなくなった藤井叡王。角換わり相腰掛け銀の定跡形から伊藤七段が穴熊に囲ったところ、藤井叡王は果敢に仕掛けていきます。伊藤七段も辛抱強くチャンスを待ちますが、手順に自陣に引き付けた馬を起点に伊藤七段の守り駒を削り切り、藤井叡王が勝利を収めました。これで、決着は最終局へ持ち越しとなりました。
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