早大など、超新星残骸「SN1006」の衝撃波で磁場の100倍以上の増幅を確認
マイナビニュース / 2024年7月25日 21時53分
SN1006はこれまでの観測でさまざまなことが明らかにされてきたが、その1つが、SN1006ではPeVまでの宇宙線加速はできない、というものであった。そこで今回の研究では、(1)ESAのマイクロ波背景放射観測衛星「Planck」を加えた1~100GHzの広帯域電波スペクトル解析、(2)南アフリカの64台構成の電波望遠鏡群「MeerKAT」と、チャンドラによる高解像度の電波/X線画像の直接比較、(3)多波長スペクトル解析による検証というアプローチで、この難問の解決に挑むことにしたという。その結果、SN1006のシェル(縁部)には、磁場が100倍以上に増幅された領域が混在し、それが電波スペクトルの「折れ曲がり」と同時に「細いシェル」を説明することが明らかにされた。
一方で、磁場強度が違うにも関わらず、電波とX線で観測されるシェル構造が似通っているのは、磁場が100倍以上も増幅された領域がシェルに沿って、ほぼ一様に広がっていることを示唆するとした。これらは衝撃波面に沿ってパッチ(ホットスポット)のように点在している可能性もあるし、極めて薄いシート状に広がっている可能性もあるという。
また、他の若い超新星残骸「RXJ1713.7-3946」や「カシオペアA」で観測されたX線のホットスポットの点滅が、SN1006では見えなかった理由としては、チャンドラの解像度でも画像で分解することができない小さな(あるいは薄い)領域であるためだという。今後の観測で、RXJ1713.7-3946やカシオペアAで観測された時間変動が見られれば、より強い制限を与えられることになるとした。
最後に、電波とX線の画像から、さまざまな位置で電波とX線のシェルの厚みの比較が行われた。すべてのシェル領域で、磁場の増幅が見られ、増幅率は100~300倍程度であることが判明。SN1006で磁場増幅の確かな証拠が得られたことで、超新星残骸ではPeVまで加速できないとされる問題に、重要かつ新たな示唆が得られたとした。
研究チームは今後、より広範な種類と年齢の超新星残骸で、磁場増幅の検証を行っていく予定としている。
(波留久泉)
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