兵庫県立大、アンモニア固体を常温においても安定化させることに成功
マイナビニュース / 2024年7月26日 18時52分
ガラスマトリックスに閉じ込めたNH3固体の熱的安定性を解明するため、熱重量測定が行われると、52℃まで重量減少は認められず、NH3固体はこの温度まで安定であることが確認された。なお52℃以上では、熱分解による重量減少が進行し、520℃以上ではガラスマトリックスのみ残留したという。
NH3固体が52℃まで安定化する理由を調べるため、常温25℃における標準生成ギブズエネルギーが推算されると、その値は、分子1モルあたり-6~-12kJだったとし、NH3固体は常温において固体の形態を保てることが理論的にもわかったとする。
常温において固体の形態を維持している何らかのエネルギーの候補の1つが、NH3固体とガラスマトリックスとの界面に形成される強固なB-N結合と推測された。この化学結合によって、固体が安定化されることが考えられるという。そして2つ目の候補としては圧力が考えられるとし、強固なB-N結合による界面によって拘束されたNH3固体では、微粒子の曲率中心に向かって圧力が生じることが考えられるとした。なお、この圧力が固体の形態を維持するために有効に作用することが考えられるとしている。
なお、水素をNH3に貯蔵した後、利用で取り出す際も解決すべき課題はあるという。燃料電池などで利用するためにNH3から水素を取り出すには、ルテニウムやニッケルなどの触媒を用いて、400℃以上の高温に加熱する必要がある。当然ながら、エネルギー消費の視点では、NH3からの水素生成温度をできるだけ低くする必要がある。研究チームは現在、量子力学に基づく第1原理計算によって、NH3固体の熱容量の精度を高めるための検討も進めているとしている。
その点、ガラスに閉じ込めたNH3固体は、加熱による昇華の際、分子のままではガラスマトリックスを透過しにくく、水素と窒素に解離し易い可能性がある。つまり、ガラスマトリックスにNH3を分解する触媒物質を加えると、80~200℃の低い温度において、NH3固体から水素を分離回収できる可能性があるとし、研究チームは現在、水素の分離回収にも挑戦しているとした。
(波留久泉)
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