理科大など、ブラックホール近傍の数秒の変化を捉えることに成功
マイナビニュース / 2024年7月29日 14時49分
秒スケールでの変動に伴って、偏光の情報がどのように変化しているのかを調べるため、時間をずらしながら2秒ごとの平均(移動平均)が求められた。最も明るくなる時に偏光度が低くなり、偏光角が明るさのピークの前後で変化する様相が示されたという。観測時間全体での平均の偏光度は約4%だが、短時間変動中では約5%から約3%に変化していたとする。さらに、ピーク前後で比べると偏光度は約5%から約2.5%、偏光角は約-25^∘から約-45^∘に変化していた。これは、ピーク直後の2秒間で偏光の情報が最も変化していることが示されているという。
明るさの増減に付随した偏光状態の変化については、最も明るい状態の時に降着円盤かコロナ、もしくはその両方がブラックホールに落ち込んでいくことによって説明がつくと考えられるとする。それにより、降着円盤内からの無偏光の放射が多くなったり、コロナと降着円盤からの偏光角の異なる光が混ざりあったりしたことで、偏光度が低くなり、偏光角も変えられたことが考えられるとした。
研究チームは今回の解析手法に対し、大中小さまざまなブラックホール天体での、さまざまなX線強度変動への適用が可能と考えているという。たとえば、ブラックホール連星ではしばしば、「準周期的X線強度変動」(QPO)が観測される。今回用いた解析方法を使うことで、QPOを時間の関数として捉え、その変動を偏光という観点から解析を行えることが考えられるとした。多彩なブラックホールの多くのタイムスケールの偏光の変動を調べることで、ブラックホール連星のように重力の大きな天体にガスが回転しながら落ちている系全体で、統一的な物理描像の理解が進むことが期待できるとしている。
今回のはくちょう座X-1はコロナからの放射が優勢な時期で、降着円盤内縁は比較的ブラックホールから離れていると推測されるとする。それに対し、降着円盤がブラックホールに近づき、降着円盤からの放射が支配的になる時期もある。このような時期における同様の偏光の短時間変動を測定することで、ブラックホール近傍の超強重力場におけるガス降着の物理の検証ができると期待されるとした。
将来的に、より高感度な観測技術を持った偏光観測衛星の登場や理論研究の発展が合わさることによって、飛躍的にブラックホール近傍の物理現象の理解が進むことが期待される。
(波留久泉)
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