農工大、全固体リチウム電池用の固体電解質を高分子を用いて実現
マイナビニュース / 2024年8月1日 17時42分
今回の検討では、約30%という比較的高い架橋部位(AGEユニット)比率の架橋共重合体に、一般的な水準と比較して極めて高い濃度のリチウム塩を含有させた電解質が、膜状の材料として得られ、イオン伝導性と強度の良いバランスを示すことが明らかにされた。このような材料設計は、CO2/エポキシド共重合体型電解質において、一般的なポリエーテル電解質の性質とは逆に塩濃度の増加と共にイオン伝導度が向上するという、先行研究の成果によるものとした。
実際に負極としてリチウム金属、正極として「リン酸鉄リチウム」を用いたLIBが試作され、試験が行われた。すると、400回以上におよぶ充放電サイクルが可能であることが確認されたという。これまで固体高分子電解質材料では、イオン伝導度を向上させるために必要なポリマー構造の変更や可塑剤の添加により強度が失われるため、セパレータ兼電解質として設置しこのようなサイクル性能を実現することは難しいものだったとする。また、ポリエーテル電解質ではイオンを高分子鎖で囲い込むような強固な錯体構造を形成することが必須であり、それが架橋により損なわれることから、架橋はあまり効果的な技術であると考えられてこなかったという。今回の研究により、イオン伝導メカニズムが従来型とは異なる材料であれば、架橋がイオン伝導性と力学的強度の両立のために有用である可能性が明らかにされた形だ。
今回の研究では、モノマーユニットのうち約30%という比較的高い架橋部位の密度を有する架橋高分子に超高濃度の塩を溶解させるという新しい材料設計により、優れたイオン伝導性と力学的強度のバランスが実現された。今後、材料調製プロセスのさらなる検討により、膜厚といった素材としての特性を最適化していくことで、電池内部の電気抵抗低減などが可能であると期待されるという。また、従来材料より優れる電気化学的な安定性を活かして、より高電圧で作動する電池や、元素戦略面で課題のあるリチウムに代わる元素(ナトリウムなど)を用いた次世代電池への応用に発展することも期待されるとしている。
(波留久泉)
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