欧州の新型ロケット「アリアン6」が初打ち上げ - ふたたび繁栄を取り戻せるか?
マイナビニュース / 2024年8月3日 8時30分
また、このブースターは、運用中の小型ロケット「ヴェガC」の第1段と共通化し、コストダウンも図っている。
全長は最大(64の場合)で62m、直径は5.4mで、地球低軌道に最大21.6t、静止トランスファー軌道へは最大11.5tの打ち上げ能力をもつ。
アリアン6の特徴
アリアン6はロケットだけ見ると、アリアン5と比べ、それほど目新しい部分はない。たとえば第1段エンジンの「ヴァルカン2.1」は、アリアン5が使っていたヴァルカン2の改良型であり、第2段エンジンの「ヴィンチ」も、もともとアリアン5の改良型の「アリアン5 ME」で使うために開発されたものの、MEそのものが開発中止になり、長らく塩漬け状態にあったエンジンである。
また、米スペースXの「ファルコン9」ロケットのように、機体を着陸させて再使用することもできない。
一方で、新しくなったのはロケットを造る体制である。アリアン5までは、「欧州のロケットは欧州全体で造る」という大前提があった。そのため、ESAが主体となり、「どこの国が、ロケットのどの部分の開発を担当するか」ということを、各国の開発費用の負担額に応じて分配する、「ジオグラフィック・リターン」という仕組みがあった。つまり、フランスやドイツ、イタリアなどがそれぞれ部品を開発して製造し、それを持ち寄って、ひとつのロケットを造っていたのである。
このやり方は、欧州全体に公平に仕事を行き渡らせるという点では役立ったものの、効率はきわめて悪く、技術的に最適な設計にすることもできなかった。そのため、産業界から改善を要求する声が強く上がった。
そこで、アリアン6では、ESAの役割は計画の管理と資金提供を出すのみとなり、開発の主体は民間のアリアングループが担うことになった。どんなロケットにするか、どこの国のどの技術を採用するかという具体的なことは、同社が一元的に引き受けることになったのである。
この新しい開発体制によって製造や運用がより効率的にできるようになり、またブースターをヴェガCと共通化することとあわせて、打ち上げコストの大幅な削減が実現できるとしている。具体的な金額は明らかにされていないが、アリアン5と比べ約半額になるとされる。
●軌道上でのつまずきと、遅れの影響は - 欧州の主力ロケット復活への道
アリアン6の初打ち上げ
当初、アリアン6の最初の打ち上げは2020年に計画されていたが、開発中の問題のほか、新型コロナウイルス感染症の流行の影響もあり、4年以上の遅れが生じることになった。
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