東北大など、有機分子のキラリティをそろえて無加湿プロトン伝導特性を向上
マイナビニュース / 2024年8月7日 17時34分
また今回作製された結晶はいずれも、単結晶X線構造解析の結果から無加湿でH+が伝導できる経路を有していることが確認されたとのこと。チアゾールを用いた塩では、原料に1Sと1R体分子のC酸を50:50の比率で用いたにもかかわらず、1Sもしくは1R体分子のみを含むH結晶が得られ、自然分晶現象が観測されたという。
一方、「イミダゾール」や分子(2)を用いた塩では、H/R結晶をそれぞれ得られ、いずれの結晶中においてもイミダゾールもしくは分子(2)が回転運動をしていたとする。また分子(2)の塩では、H/R結晶中で分子の配向状態が互いに異なっており、キラリティの存在で分子の運動性が異なることも明らかにされた。
その後、分子運動性の直接評価のため塩(1)のH/R結晶が比較された。すると前者の結晶中において、分子(2)がR結晶中よりも活発に回転運動していることが判明。より活発な分子運動は、より高効率な無加湿H+伝導性の発現を期待させるという。そこで、塩(1)のH/R結晶のH+伝導度を測定したところ、H結晶の方がR結晶よりも活性化エネルギーが低く、伝導度が高いことが確認された。このことは、キラリティの導入によって、より高効率なH+伝導性がもたらされたことを意味するという。
一方、イミダゾール塩ではH/R結晶でアゾール分子の運動性やH+伝導性に違いは見られなかった。イミダゾール塩では、キラルなC酸も激しく運動しているため、キラル分子による非対称な結晶空間が平均化されてしまったとのこと。また、塩(1)ではC酸の運動性が乏しく、結晶空間にキラリティによる非対称性の影響が保持されるため、キラリティ効果が観測されたことが考えられるとした。
研究チームによると、今回の研究で見出されたホモキラルな分子を用いた結晶空間の非対称性の重要性は、生体内のH+輸送やイオンチャネルなどの現象と材料科学をつなぐ重要な知見だという。分子が規則正しく並んだ有機結晶の知見を最大限に利用することで、低中温領域でも使用可能な燃料電池の実用を可能とする高効率なH+伝導体から超H+伝導体の実現につながることが期待されるとしている。
(波留久泉)
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