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横市大など、ワニはなぜ長時間潜水できるかをヘモグロビンの立体構造で解明

マイナビニュース / 2024年8月8日 15時21分

今回の研究では、米・ノーステキサス大学にて、生態学の実験目的で飼育されているワニ(Alligator mississippiensis)から採取された血液よりヘモグロビンが精製され、クライオ電子顕微鏡による構造解析が実施された。その結果、酸素が結合した状態、一酸化炭素(CO)が結合した状態、および酸素が解離した状態(デオキシ状態)の3種類の状態の立体構造を解明することに成功したとする。なおデオキシ状態のヘモグロビン試料は、阪大の栗栖教授の研究室に設置された嫌気チャンバー内の低酸素環境下で調製が行われたとした。

2.2オングストローム(0.22ナノメートル)の高分解能で決定された、T型構造を取ったデオキシ状態のワニのヘモグロビンの立体構造から、ヘモグロビン4量体のαサブユニット、βサブユニットの界面に合計2分子の重炭酸イオンが結合することが突き止められた。その結合部位は、他の脊椎動物のヘモグロビンにおける有機リン酸の結合部位とは異なっており、ワニのヘモグロビンが独自に獲得されたものであることが確かめられた。

重炭酸イオンは合計8つのアミノ酸によって認識されており、ヒトを含む他の動物のヘモグロビンと比較すると、ワニでは特に2つのアミノ酸置換(βサブユニットの38番目の「スレオニン」(20種類ある天然アミノ酸のうち、ヒトではリジンに相当する)と、41番目の「フェニルアラニン」(20種類ある天然アミノ酸のうち、ヒトではチロシンに相当))が、重炭酸イオンによる作用を獲得するために重要であることが解明されたとする。

ワニのヘモグロビンの重炭酸イオン作用が報告されたのは1977年のことで、今回の研究により50年近い時間を経て、ワニが進化の過程で独自に獲得した重炭酸イオン作用の仕組みが突き止められた。それにより、脊椎動物のヘモグロビン分子進化における新たな知見を提供できる可能性が期待されるという。また今後は、鎌状赤血球症などで心肺機能の弱い患者に対する遺伝子治療や輸血用人工血液といった医療への応用も期待されるとしている。
(波留久泉)



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