さらに強く、シンプルに - スペースXが最強ロケットエンジン「ラプター3」公開
マイナビニュース / 2024年8月19日 17時36分
米宇宙企業スペースXは2024年8月4日、巨大宇宙船「スターシップ」に使うために開発中の新型ロケットエンジン「ラプター3」を公開した。
従来のエンジンに比べ、設計の見直しや最新鋭の3Dプリンターの使用などにより、推力向上や軽量化を実現したという。
人類の火星移住を目指す同社にとって、ラプター3はその実現を左右する鍵となる。
スターシップとラプター
スターシップ(Starship)は、スペースXが開発中の宇宙輸送システムで、全長121.3m、直径9m、打ち上げ時の質量5000tで、地球を回る軌道へ100t以上の打ち上げ能力を目指す、人類史上最大、最強のロケット、宇宙船である。
スターシップは、第1段の「スーパー・ヘヴィ(Super Heavy)」ブースターと、第2段の「スターシップ」宇宙船の、2つの段階から構成されている。また、機体すべてを再使用することができ、飛行機のように運用することで、劇的な打ち上げコストの低減と打ち上げ頻度の向上を狙う。
こうした特徴により、スペースXは、人工衛星を一度に大量に打ち上げたり、有人月探査を実現したりといった目標のほか、人類の火星移住を実現することも目指している。
その実現を左右する最大の鍵となるのが、スーパー・ヘヴィとスターシップの両方に装備されるロケットエンジンの「ラプター(Raptor)」である。
ラプターの特徴のひとつは、燃料に液化メタンを使用しているところにある。メタンは、他のロケット燃料、たとえばケロシンよりも高い性能が得られるとともに、液体水素より低コストであるため、開発や運用がしやすいという利点がある。
また、爆発などの危険性が低いため、運用性や安全性が高く、さらにススが発生しないためエンジンの再使用もしやすいといった特徴ももつ。
さらに、火星で現地調達することもできるため、火星移住を目指すスペースXにとって、うってつけの燃料である。
そして、ラプターのもうひとつの特徴が、エンジンを動かす仕組みに「フルフロー二段燃焼サイクル(Full-flow staged combustion)」と呼ばれる方法を採用している点にある。
この仕組みは、複雑で開発のハードルが高い分、高い効率を得ることができる。また、安全性も高く、再使用にも向いている。
フルフロー・サイクルのエンジンは、これまで実用化されたことはなく、ラプターが史上初の例となる。その難しさ、そのうえでさらなる高性能を狙ったこともあり、燃焼室が溶けるなどの問題が起き、開発は難航したものの、現在ではほぼ手懐けることに成功している。
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