佐野正弘のケータイ業界情報局 第134回 日本の5G、整備が加速しないのは“儲からない”から!?
マイナビニュース / 2024年8月21日 17時30分
携帯各社がエリアの広さや通信品質で優位性を打ち出し、激しい競争を繰り広げていた4Gの時代と比べると、5G時代の現在は携帯各社のネットワーク投資をむしろ抑制することに力を入れており、整備にも消極的です。その理由をひとことで表すならば、ズバリ“儲からない”から。では、5Gで携帯電話会社が儲かるには、何が必要とされているのでしょうか。
5Gの整備に及び腰となった国内携帯各社
携帯電話の通信規格はおよそ10年ごとに入れ替わる傾向にあり、現在主流の「4G」の1つ前となる「3G」はサービス終了が進んでいます。実際、KDDIは2022年に3Gを終了させており、ソフトバンクも能登半島地震で大きな被害を受けた石川県を除き、2024年4月15日にサービスを終了。その石川県でも、2024年7月31日をもってサービスを終了しています。
その一方で、現在携帯各社は新しい通信規格「5G」の整備を進めており、将来的には4Gから5Gへと主流が移っていくものと考えられます。ですが、ここ数年来、携帯電話会社の5Gネットワーク整備状況を見ていると、4Gまでとは力の入れ具合が大きく変化しているように感じます。
実際、LTEを含む4Gの時代は、携帯各社が基地局の整備に積極投資をし、新技術も積極的に取り入れるなどしてネットワークを進化。エリアや通信品質で自社がいかに優れているかを打ち出し合うなど、競争が非常に過熱していました。ですが、5Gでは各社がこぞって5Gのエリアを拡大する様子は見られず、5Gの主要技術である「Massive MIMO」などの導入にも消極的。とりわけ「サブ6」と呼ばれる高速大容量通信が可能な高い周波数帯の整備は、今なお世界的に遅れが指摘されている状況にあります。
その傾向は数字にも表れています。国内の通信機器関連事業者の団体である情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の資料によりますと、5G基地局の出荷数は2021年をピークとして既に減少傾向にあり、その需要も3Gや4Gの規模に達していないとされています。携帯各社の5Gに向けた投資が、いかに伸びていないかが理解できるのではないでしょうか。
しかも、投資抑制の傾向は今後さらに加速するものと見られており、そのことを示しているのがインフラシェアリングの拡大です。インフラシェアリングとは、携帯電話会社同士、あるいは基地局を設置する通信鉄塔などの設備を持つ会社と基地局を設置する場所を共有することで、投資コストを抑えながらエリアを広げる手段として海外では古くから用いられていますが、4Gまで非常に激しい競争を繰り広げていた日本ではあまり活用されていませんでした。
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