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理研など、天然並みの人工クモ糸を開発するための複雑な階層構造などを解明

マイナビニュース / 2024年8月29日 18時4分

さらに、わずかに酸性の条件(pH5.0~5.5)でLLPSが誘導されると、MaSp1が微細なマイクロ繊維ネットワーク構造を形成することも判明。これらの構造の形成は迅速に行われるため、これまでの研究では観察されなかったという。

また研究チームは、蛍光標識されたMaSp1と高速顕微鏡を使用して、バイオミメティクス(生物模倣)な化学的勾配の形成を誘導し、形態の微細な変化をリアルタイムで観察する技術を開発。リン酸塩イオン水溶液の界面に応じて、MaSp1はLLPSを経て、タンパク質液滴の成長と融合を徐々に進行させたとする。対照的に、酸性条件下でのイオン水溶液の界面においては、MaSp1のタンパク質液滴がわずか数秒で微細なマイクロ繊維ネットワークに変換されたとした。

なお、このような迅速な高次構造の形成が人工スピドロインシステムで観察されたことは重要とする。さらに、LLPS状態と階層的な繊維構造の形成との明確な関係が確立されたことで、これはマクロスケールのクモの糸の組織の基礎となるものとするほか、今回の人工クモ糸は引っ張りなどの力学変形に応じて、βシート構造が形成されることもラマン分光法により示された。これは、βシート構造の形成がクモ糸の優れた力学物性、特に高い靭性の原因であると理解されているため、重要な結果としている。

従来の繊維製造方法は、環境負荷が高く、天然クモ糸の特異的な力学物性を再現できないため、新たな紡糸技術が求められている現状に鑑みると、今回の研究成果は重要とした。また、今回の研究から得られる知見は、他の自己集合型のバイオ素材や生体模倣材料の設計にも応用できる。将来的には、MaSp1と他のスピドロインおよび関連タンパク質との相互作用に関する研究や、タンパク質の修飾反応に関する研究、人工クモ糸のスピニング方法のスケールアップ技術の開発などが必要になることが予測されるため、研究チームは今後も、これらの研究を継続する予定としている。
(波留久泉)



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