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どこでもサイエンス 第291回 「テクネチウム」 周期表で銀の手前なのに、自然界に存在しないひねくれた奴

マイナビニュース / 2024年9月4日 7時27分

そして化学者は次々と未知の元素を特定していきます。周期表で歯抜けだったところもどんどん埋まって行きました。ところが、どうしても見つからない元素がでてきます。原子番号43番になる元素です。

この元素の発見に取り組んだのが、日本人の小川正孝です。後に東北大学の総長になるほど優秀な化学者だった小川は、1908年に英国留学中の分析実験で、いままで知られていない原子量、性質の物質を発見。43番元素を発見したと発表します。これはニッポニウムと名づけられました。ところが追試してもこの元素は発見できません。他の化学者も43番元素を探索するのですが、全く発見できなかったのです。東北大名誉教授の吉原賢二さんの記事に経緯が詳しくのっています(新書でも出ています。

後に、小川さんが発見したのは75番のレニウムだったのではないかとされています。レニウムは自然界では最も存在比が少ない稀少な元素で1925年に最後から2番目に発見された天然に存在の元素です(最後はフランシウム)。なお、レニウムはライン川の元素という意味です。

小川さんは、つまり17年も早くレニウムを発見していたのですが、抜けていた43番だと思っていたということなんですな。実際当時の分析技術では、その区別をするのが難しいほどであり、間違えたのも無理からぬことだったのです。

そして実は43番元素は、その同位体が全て放射性であり、どんどん崩壊して他の元素に分裂してしまうものだったのです。自然界ではウラン238の分裂のさいに、ごくごくわずか生成されることがありますが、これも壊れていくので非常に発見しにくいものだったのですな。

ところが、アメリカのセグレは1936年、42番元素のモリブテンにサイクロトロン加速器で重陽子線が衝突したものを分析したところ、43番元素を発見します。技術的(テクニカル))に作られたことからテクネチウムという名前が1947年に点けられています。

なお、地球上ではごくごくわずかしかないテクネチウムですが、赤色巨星など進化した恒星では発見されています。

このテクネチウムですが、製造方法は確立されており、自然界にはないものの、医学などに応用されています。テクネチウムは全て放射性同位体なのですが、放射線の出方がβ線がでず、γ線だけがでるので、放射性医薬品を製造し、それを注射して臓器を描くSPECT画像検査に用いられているそうです。

ところで、セグレさん、運良くテクネチウムを発見したラッキー化学者っぽい書き方をしましたが、85番アスタチン、そしてプルトニウム239の発見に貢献しています。その前にユダヤ人であるがゆえ母親がホロコーストの犠牲になり、その後マンハッタン計画にリーダーとして参加するなど波乱の人生です。なお、1955年の反陽子の発見で1959年ノーベル賞を受賞されています。また、科学史の先生としても有名で、いくつか著作があり……あ、私の本棚にもあったよ。

では。
(東明六郎)



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