1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

熊本大、不可能と思われていた酸化グラフェンの水素イオンバリア膜を開発

マイナビニュース / 2024年9月5日 18時9分

画像提供:マイナビニュース

熊本大学は9月4日、酸化グラフェン(Graphene oxide:GO)はイオンを高速に伝導する性質があるためにイオンバリア膜としての使用は困難だったが、構造内に「孔」が無いGOを合成し薄膜化することで、水素イオンバリア膜の作製に成功したことを発表した。

同成果は、熊本大 産業ナノマテリアル研究所の畠山一翔助教、同・伊田進太郎教授らの研究チームによるもの。詳細は、ナノ/マイクロスケールに関する学際的な分野を扱う学術誌「Small」に掲載された。

原子1個分の厚みしかないナノシート(二次元物質)であるグラフェンは、その薄さにも関わらず、あらゆる物質を遮断できる究極のバリア膜材料として期待されている。しかし、グラフェンを複雑な形状を持つ物体に成膜することは、技術的・コスト的に非常に困難なことが課題だった。そこで注目されているのが、グラフェンの酸化物であるGOだ。同物質は、グラフェン骨格に多数の酸素官能基が付いた構造を持ち、酸素官能基のおかげで溶媒に分散させることもできる。この性質により、複雑な物体表面にも薄膜を製膜することが可能となっている。

ところがGOにはイオンを高速に通してしまう性質があり、イオンバリア膜への応用展開、特にイオン半径が小さい水素イオンバリア膜の開発は困難と考えられていた。そこで研究チームは今回、孔を持たないGO(Pf-GO)を合成して薄膜化することで、困難とされているGO製水素イオンバリア膜の開発を試みることにしたという。またその過程で、水素イオンの伝導経路についての調査も行うことにしたとする。

まず、合成されたGOおよびPf-GOに孔が存在するのかどうかが、電子顕微鏡により観察で確かめられた。一般的なGOは、「ハマー法」(主に過マンガン酸カリウムと硫酸を用いたグラファイトの酸化方法)によるグラファイトの酸化および超音波による剥離によって合成される。それに対してPf-GOは、「ブロディ法」(主に塩素酸カリウムと発煙硝酸を用いたグラファイトの酸化方法)によるグラファイトの酸化およびアンモニアを使用した剥離により合成された。そして観察の結果、一般的なGOはシート内に多数の孔が存在しているのが観察されたが、Pf-GOではそれが無かったとした。この結果により、一般的なGOは構造内に多くの孔が存在している一方で、Pf-GOにはそれが存在していないことが示された。

次に、GOおよびPf-GOから薄膜が作製され、装置を用いて水素イオンの透過が評価された。評価に使われた装置では、GOおよびPf-GO膜で隔てた2つのセルに、pH7の食塩水とpH1の塩酸水溶液をそれぞれ入れ、食塩水側のセル(測定セル)のpH変化を観察することで、水素イオンの透過特性を評価することができるというものだ(phとは水溶液がアルカリ性や酸性かを示すものだが、水素イオン濃度のことである)。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください