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横国大、AI処理を低消費電力で高速化する「スピン波リザバー素子」を開発

マイナビニュース / 2024年9月9日 6時31分

画像提供:マイナビニュース

横浜国立大学(横国大)は9月5日、磁気の波であるスピン波を用いた物理リザバーである「スピン波リザバー素子」の開発に成功したと発表した。

同成果は、横国大大学院 理工学府の長瀬翔氏、同・根津昇輝氏、同・大学院 工学研究院/先端科学高等研究院/総合学術高等研究院の関口康爾教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する応用物理学全般を扱う学術誌「Physical Review Applied」に掲載された。

トリリオンセンサなどとも言われるIoTの進展で、大量のデータを生成するデバイスが普及するにつれて、「エッジコンピューティング」の重要性が高まりつつある。エッジとは一般的には「端」などの意味を持つが、コンピューティングの世界ではデータが生成された場所を指し、エッジコンピューティングとはその場でデータの処理を行う演算技術のことをいう。現在のデータを中央サーバに集めて処理するクラウド方式だと、情報を上げてからそのフィードバックで端末を制御すると遅延が生じてしまう上に、ネットワークに対する負荷が増大してしまうため、エッジコンピューティングであればそれを避けることが可能となる。

一方で、現代社会の情報基盤となっている、CMOSなどの電子演算回路は、トランジスタのスイッチング動作に伴う消費電力が比較的大きい傾向にある。特に、高性能な処理を長時間リアルタイムで行う場合、消費電力は飛躍的に増加してしまう。エッジデバイスは、バッテリー駆動や省電力化が求められるケースが多く、またIoTのトリリオンセンサともなると、その場で各センサが自ら発電する環境発電が求められており、CMOS回路の消費電力は大きな制約となってしまう。

そうした問題を解決する手段として注目されているのが、「リザバー演算」。同技術は、入力信号を複雑な非線形ダイナミクスを持つシステム(リザバー)に通すことで、高次の特徴抽出を行うことができるという特徴を持つ。しかも、リザバーとしては、レーザー共振器、スピン波デバイス、ニューラルネットワークなど、さまざまな物理系を利用することが可能。物理リザバーは、これらの物理系が本来持つ非線形なダイナミクスを直接利用するため、CMOSに比べてはるかにシンプルな構成で演算回路を実現できる。これにより、消費電力を大幅に削減しつつ、高速な情報処理も行えるようになるとされる。そこで研究チームは今回、磁性体内部のスピンが集団的に振動する現象(磁気の波)であるスピン波を用いた物理リザバーを開発することにしたという。

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