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横国大、AI処理を低消費電力で高速化する「スピン波リザバー素子」を開発

マイナビニュース / 2024年9月9日 6時31分

今回の研究では、軟磁性体パーマロイの薄膜(厚さ300nm)を、40μm×80μm(または90μm×120μm)の微細な形状に加工し、回折格子の一種である「ホイヘンススリット」(波の回折現象を利用してさまざまな波動制御を実現する人工構造)を導入した物理リザバーのスピン波リザバー素子が開発された。

ホイヘンススリットがあることで、スピン波の伝搬経路が制限され、特定の周波数成分が選択的に増幅または減衰する現象が生じる。要は、スピン波リザバー素子においてスピン波は、パーマロイ薄膜内を伝搬する際に、干渉、減衰、試料端での反射など、複雑な干渉効果を受け、スピン波の振幅、位相、周波数などが変化するのである。これらの複雑な現象が、各出力端子における特徴量の増大に寄与する仕組みだ。実験の結果、1つの入力信号が4つ(または8つ)の異なる出力信号に変換されることが確認されたとした。なおこの変換は、微細加工技術のさらなる高精度化によって、より複雑かつ多様なパターンへと拡張できる可能性が示されているとする。

続いて、スピン波リザバー素子に0.8ナノ秒の高速電気信号が入力され、生成されるスピン波信号の特徴を使って機械学習モデルに対する学習が行われた。その後、未知の入力信号に対するスピン波応答から、元の電気信号強度を推定することに成功したという。短時間記憶およびパリティチェックといった基本的なタスクにおいて、同素子は従来の光・スピン素子を大幅に上回る性能を示し、リアルタイム信号処理への応用が期待されるとした。

今回の研究で開発されたスピン波リザバー素子は、その高いポテンシャルが示されているが、さらなる性能向上のためには、材料、素子構造および信号検出の各要素技術を最適化する必要があるとする。特に、スピン波のナノスケール伝搬特性に着目し、高集積化されたチップデバイスへの応用を視野に入れた研究を進めることで、次世代の情報処理技術の革新に貢献できることが考えられるとしている。
(波留久泉)



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