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東大、量子コンピュータに必要な魔法資源の高速定量化手法を提案

マイナビニュース / 2024年9月9日 17時58分

画像提供:マイナビニュース

東京大学(東大)は9月6日、「量子誤り訂正」の機能を備えた量子演算に必要な「魔法資源」を定量評価する手法を大幅に効率化し、魔法資源の評価という特別なタスクの最適化問題に潜む数学的構造を計算プロセスにうまく組み込むことで、「最適化問題」の求解に必要な計算時間・メモリを大幅に圧縮することに成功したと発表した。

同成果は、東大大学院 情報理工学系研究科の浜口広樹大学院生、同・浜田航宇大学院生、同・大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻の吉岡信行助教らの研究チームによるもの。詳細は、量子科学および科学関連に関する全般を扱う学術誌「Quantum」に掲載された。

量子誤り訂正機能を持つ量子コンピュータによって複雑な演算を行うには、コンピュータの内部で自然に実現可能な操作だけでは不十分であり、補助的な外部入力として「魔法状態」と呼ばれる量子状態を準備する必要がある。同状態は、標準的な量子ゲートでは生成できない、非古典的な性質を持ち、それを高い精度で準備するためには大きなコストがかかる。そのため、演算によって消費される同状態の数、つまり「魔法資源」を定量的に理解し見積もることが望ましいとされている。このような定量指標として最もよく知られているのが、「Robustness of Magic」と呼ばれる指標だが、従来の研究では、評価に必要な計算メモリが大きく、8量子ビットに相当する評価でさえ、現在のスーパーコンピュータでは格納できないデータ量が必要になると見積もられるほどだったとのこと。

魔法資源の値は、主に資源配分や生産計画に用いられる数理最適化問題の「線形計画問題」を解くことで得られる。同問題とは、線形関数を目的関数として最適化(最大化または最小化)し、線形の不等式または等式の制約条件を満たすことで解が求められる。ここで最大の問題は、パウリ群の可換な部分群に属する演算子の同時固有状態である「スタビライザー状態」と呼ばれる量子状態の集合をすべて考慮する必要があるため、その大きさが量子ビットの数に対して超指数関数的に増大してしまうという点にあるという。

そこで研究チームは今回、実際の最適解が、著しく少ない数の状態から構成されていること、そしてそれらの状態は、ターゲットである魔法状態との「類似度」が極端に大きい/小さいことに着目することにしたとする。魔法資源を効率的かつ大規模に評価する手法が新たに開発され、上述の計算が通常のパソコンだけで実行可能となることを示すことが目指された。

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