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東大、水素を用いた新規合成法で抗アルツハイマー薬の前駆体の合成を実証

マイナビニュース / 2024年9月9日 18時1分

画像提供:マイナビニュース

東京大学(東大)は9月6日、水素を使う化学変換を基軸とする環境調和型化学品生産のコンセプトを、抗アルツハイマー薬の前駆体である「ドネペジル」の連続合成で実証したことを発表した。

同成果は、東大大学院 理学系研究科 化学専攻の小林修教授と、同・石谷暖郎特任教授らの研究チームによるもの。詳細は、欧州15か国16の化学団体が参加するChemistry Europeが刊行する化学全般を扱う学術誌「Chemistry, A European Journal」に掲載される予定。

原子番号1番の水素は、およそ138億年前に宇宙が始まって最初に誕生した元素の1つ。宇宙誕生からおよそ38万年が経って宇宙が十分に冷え切った時に、1個の陽子が1個の電子を捕獲することで大量に誕生した。現在でも宇宙において、他の元素よりも圧倒的に多い元素であり、脱化石燃料の低炭素社会を目指すため、化石燃料に変わる燃料として、水素の利用に関する研究が進められ、すでに水素を燃料とした燃料電池車も市販されている。

また、水素は地球においてはヒトを含めた生命体の身体を構成する有機物(有機化合物)を形作るのに重要な元素の1つ。有機物は炭素を中心とし、そこに水素などの他の元素が結合した化合物だ。そのため、医薬品を含む化学品の多くに水素が含まれている。化学品の製造に関しても、現在は化石燃料に依存しており、炭素と水素を主構成要素とする原油に、酸素など他の元素を導入していくことで製造されている。

つまり、化学品の製造においても、化石資源に依存するのではなく、バイオマスや大気中のCO2などをリニューアブルな炭素源とする循環型の化学品製造を実現することが、脱炭素社会の実現には重要となる。そのため、酸素の割合の多いバイオマスなどの炭素源に水素を導入し、望みの構造へと変換していくような化学反応体系の研究が試みられているが、現在の化石燃料に依存した技術からは大きなパラダイムシフトが伴う。これらのことから、水素を原料とする有機化合物合成法は、水素社会の化学品製造の基幹であり、今後、さらに重要性が増すことが予想されるとする。しかも、水だけが排出されるような生産システムを構築できれば、まさに理想的な化学品生産法となるという。

そこで研究チームは今回、そのようなコンセプトを実証するため、水素を使う化学変換を基軸とする技術でもって、抗アルツハイマー薬の前駆体である「ドネペジル」の合成に取り組むことにしたという。

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