カレー沢薫の時流漂流 第316回 上級しぐさに批判より恐怖が勝る、お国の賃上げ政策コンテストの炎上顛末
マイナビニュース / 2024年9月9日 17時21分
その昔、料理が下手な妻を「メシマズ嫁」と称し、どこのご家庭にもある食材からダークマターを精製する妻の凄腕錬金術師ぶりを自慢しあう文化があった。
今でもその文化はあるだろうし、非凡な妻を持ってしまった凡夫の苦悩に寄り添う声も多い。
だが一方で「文句があるなら自分で作れば」と一蹴されるケースも増えてきており、最近では「誰も料理ができないなら作らなければいいじゃない」という考えも出てきている。
これは餓死を受け入れたマリーアントワネットではなく、それで家庭内がギスギスするぐらいなら、自炊にこだわる必要はないということだ。
総菜や外食=不健康というのも昔の話だ、経済的に可能であれば、食事は外注というのも十分ありだ。
ちなみにこの話題の時「愛情」という言葉はご法度である、言った瞬間別室に連れていかれ、戸籍からも存在を抹消されるので絶対口にしてはいけない。
料理に限らず、やってもらっていることにはケチをつけるべきではなく、文句があるなら自分でやれという話だ。
しかし「プロ」である場合、逆に「じゃあお前がやれ」は禁句である。
素人にできないことをやって、それで食っているのがプロなのだ。
素人はプロに対し「俺だったらあのぐらいの球三塁打は堅い」など好き勝手いうものだがだが、それに対しプロが「じゃあ打ってみろよ」と素人にバットを投げつけるのは恥ずべきことであり、それならストレートにバットで素人の頭を三塁打しにいく方が潔い。
そんなわけで内閣府が開催した「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」の優勝アイデアが批判されている。
○社会保険料は税金じゃないって詭弁だから
現在、我々の生活は楽とは言い難い状況だ。
楽になるには、物価を下げるか、賃金を上げるか、どちらかが必要なのだが、現在どちらもなっておらず、むしろ悪化した感さえあるため、国民の不満は高まる一方だ。
そんな批判に「じゃあお前らが考えろ」となったかは不明だが、とにかく「チン上げコンテスト」という80年代の深夜企画みたいなコンテストが開かれた。
政策を公募する時点でどうなのか、とも思うが「政治家は庶民のことをわかっていない」という批判があるのも事実であり、それに対し「我々もスーパーぐらい行きますよIKARIとか」など、我々が存在すら知らない店の名前が出てきて、余計意識の違いが浮き彫りになることもある。
庶民の生活をよくするためには、政治家よりも庶民のアイデアの方が的を射ていることもあるだろう。ただ、募集に参加したのは内閣府の職員らしいので、このようなエリート層を庶民とくくっていいものかは悩むところがだ。
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