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JAXA、これまで困難だった「かに星雲」の硬X線画像を高解像度化に成功

マイナビニュース / 2024年9月10日 19時52分

一方、軟X線帯域を扱えるX線天文衛星にNASAの「チャンドラ」(1999年打上げ、2024年現在運用中)があり、性能的には「ひとみ」よりもチャンドラの方が上だという。しかし、今回の技術を用いると、軟X線帯域の観測画像においても、チャンドラ衛星のものに近いレベルにまで引き上げることができるほか、これまでは確認できなかった「かに星雲」のトーラスやジェット構造が確認できるようになったとした。

「ひとみ」での観測は、天体(かに星雲)からのX線がHXTを通過した後、焦点面に設置されたピクセル検出器で行われる。各点光源から放射されたX線がHXTを通った後、ピクセル検出器上に作る分布形状の情報(PSF)を用いれば、「かに星雲」の画像を推定することが可能。このように元画像を推定する問題を「逆問題」といい、今回の研究ではこの逆問題を解くアルゴリズムが開発されたという。

ピクセル検出器ではX線光子のカウント数の取得が可能。このカウント数は「ポアソン分布」という確率分布に従うことが知られている。以前より用いられているImage Deconvolutionでは、この確率分布を用いた最尤推定により天体形状を推定することが基本となる。一方、HXTによる「かに星雲」の観測データの場合には、この方法ではデータ量が十分ではなかったため、復元画像がノイジーになり、満足の行く結果が得られていなかったとする。

そこで今回の新手法では、スムース制約を与える事前分布を設定し「ベイズ推定」の枠組みを用いて元画像の推定をすることにしたという。単純にスムース制約を与えると、パルサーが星雲と比べて桁違いに明るいために、「かに星雲」が覆い隠されて見えなくなってしまうという問題が発生してしまう。そのため、元画像をパルサーと星雲の2成分モデルで表現し、星雲成分だけにスムース制約を与えることでこの問題の解決が図られた。事後確率の最大化には「EMアルゴリズム」という繰り返し計算法が用いられた。

「かに星雲」と同様に、明るい点光源を伴うような星雲状の拡散天体は数多く存在している。それらに対しても、今回の手法を用いることは可能であるほか、「ひとみ」以外の望遠鏡に対して適用することも可能としている。
(波留久泉)



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