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九大など、室温下でも多彩な分子の識別が可能な量子センシング手法を提案

マイナビニュース / 2024年9月12日 15時6分

MOFを用いて室温下において量子センシングを行った研究はこれまでにもあるが、その報告ではスピン偏極していない通常の電子スピンが用いられており、また検出可能な化学種も特定のイオンに限定されていた。それに対し、今回の研究では、光を照射することにより、有機分子の三重項状態に生じるスピン偏極した電子スピンに着目することにしたとする。それをゲスト特異的に柔軟に構造を変化させることが可能なMOFである「MIL-53」中に導入することで、高いスピン偏極率とさまざまなゲストに対する応答を両立することに成功したという。

MOF中にさまざまなゲストが導入され、その量子重ね合わせ状態の保持時間(T2)が、パルス電子スピン共鳴(ESR)により測定された。すると、導入するゲストごとに異なったT2が得られたとする。通常、ゲストが導入されると、量子ビット周辺の環境にゲスト由来のノイズが生じるため、T2は短くなる傾向が見られるという。それに対して今回の報告では、複数のゲストにおいてT2がゲスト導入前と比べて長くなる挙動が見られたとする。特に、一部のゲストでは1マイクロ秒程度と、室温では非常に長いT2が得られたとした。

この挙動について解明するため、ゲスト分子がMOF細孔内部で占有している体積の割合が調べられた結果、体積占有率が高いものほどT2が長くなっていることが判明。分子動力学計算を用いた量子ビットの運動シミュレーション結果から、体積占有率が高い状況では量子ビットの運動が抑えられており、その結果、量子的重ね合わせ状態を失わせる運動が抑制され、T2が増加したことが示唆されたという。

今回の研究により、量子ビットの運動性の制御が室温での量子センシングにおける重要な要素であることが解明された。また、量子重ね合わせ状態を長時間維持することは量子センシングのみならず、量子技術全体として重要であり、今回得られた知見は分子性量子ビットを用いた量子技術において大きな一歩になることが考えられるとする。今後は、さまざまなMOFと三重項量子ビットを組み合わせた系を複数並べ、その応答を基に化学物質を認識するといったケミカル量子センシングの実現が期待されるとしている。
(波留久泉)



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